高尾山 後編

高尾山
遠くに富士山の姿が

 世界で一番人気のある山、高尾山を歩く―日本万歩クラブの例会に参加することでスタートした我がウオーキングライフである。高尾山の七つある登山ルート(観光案内でもらったマップにはハイキングコースと書かれているが、私の気分は断然登山なのである)のうち最長(三・八キロ)で比較容易な表参道コースをてくてく歩いてきたわけだが、薬王院での参拝も終え、目指すはいよいよ山頂である。

世界で一番人気のある山、高尾山を歩く―日本万歩クラブの例会に参加することでスタートした我がウオーキングライフである。高尾山の七つある登山ルート(観光案内でもらったマップにはハイキングコースと書かれているが、私の気分は断然登山なのである)のうち最長(三・八キロ)で比較容易な表参道コースをてくてく歩いてきたわけだが、薬王院での参拝も終え、目指すはいよいよ山頂である。

 薬王院から黙々と登ること二十分、ついに高尾山山頂へ到着。標高五九九・一五メートル―登山をしたと胸を張れるほどではないと重々承知はしているが、ぐうたらインドアライターとしては快挙ともいえる出来事で、自分で自分をほめてやる。

 高尾山山頂は「関東の富士見100景」にも選ばれているそうなので、さっそく展望台から富士を望む。

 え……ないじゃん。

 いやいや、そんなわけない。空はスカイブルーに澄み渡り、ほかの山々の稜線ははっきりと見えている。富士山だけが見えないわけはないのだ。と、稜線にかかっていた白雲がゆっくりと移動し、見覚えのある優美な姿がその輪郭をあらわにしはじめた。

 富士山だ!

 ほかの山々とはまるで違う、曇とまったく同じ真っ白なその山頂部の美しさに言葉が出ない。

 世界一の山から日本一の山を見ているのだ。そんな感慨にひたりつつ、いつか自分の足であの山を歩いてみたいなどという野望がむくむくと頭をもたげてくるのに驚く。

 さて、登った山は下りなければならない。下山はもっとも過酷な稲荷山コース。行きはよいよい帰りはこわい、である。段差のキツい階段状の道は木の根がうねり、油断がならない。仕掛けられたトラップを回避するがごとく、慎重に歩を進めていく。

 前から小学校低学年くらいの女の子が元気よく登ってくる。「こんにちは」の声がうれしい。普段、見知らぬ人に挨拶することはないが、山ではすれ違う人には声をかけ合う。構えることなくこちらも自然に声が出る。勝手に感じる連帯感が、なんかいい。

 おっかなびっくりの私とは対照的に、万歩クラブの先輩方はずんずん山を下りていく。その姿はなんとも頼もしい。人生の先達の力強い足どりに、「まだ若いんだから」と背中をポンと叩かれ、勇気づけられた。そんな素敵な初歩きであった。

今回1万2162歩 距離約9mk

(まいた・ようへい=芸能ライター)