三崎口駅―小網代の森 後編

小網代
干潟を目指して森の散策路を進む

 神奈川県・三崎口駅からスタートした万歩道は、無国籍な不思議な海岸「黒崎の鼻」を経て、いよいよとりわけ楽しみにしていた小網代の森へと向かう。ふたたび畑の中の道を抜け、高台の住宅地を計二十分ほど歩き、ついに森の入り口に到着。この森は関東・東海地方で唯一、森と川と湾へと面した干潟が連続して残されている貴重な自然環境で、二千種類ほどの多種多様な生き物が棲んでいるそうだ。

 同行の宮川リーダーと岩渕勝宏氏(前編では間違って勝弘氏と表記してしまいました。すみません)は道端の植物に頻繁に目を留め、楽しそうに語りだす。解説をしてくれるわけではなく、好きなものを目にし、自然に話がこぼれでるのだ。単なる雑草や草木にしか見えなかったものすべてに名前があり、それぞれの物語を持っているという当たり前のことに気付かされる。自然の中を歩くということは、そういう小さな物語に触れていくということなのだろう。

 森の中、整備された木道を進んでいくと鳥の声が聞こえてきた。ウグイスの声に知らない声が交じる。「これはガビチョウですね」と岩渕氏。「中国ではカゴに入れて鳴き声を楽しむんだけど、やたら鳴いてうるさいんですよ。日本に入ってきてウグイスの生息地を侵すから害鳥扱いされています」。さっそくスマホで調べてみると、目の周りを流線形に白くメークしているみたいな愛らしいルックスをしている。生態系に被害を及ぼし得る「特定外来生物」に指定されているとある。「今はすぐに確認されるからヘタなことは言えないよね」と宮川リーダーが苦笑する。

 と、ゲコココココと新たな声が聞こえてきた。これならわかる。カエルだ。と思ったら…「キツツキのドラミングですよ」と即座に訂正される。

 匂い立つような緑の中、おふたりの楽しい話を聞きながら四十分ほど歩き、干潟にたどり着いた。森からの海という唐突な場面転換。チゴガニの求愛ダンスが見られるということで磯好きの私のテンションも上がる。

 しかし、カニの姿が見当たらない。いや、いるにはいるのだが、ちっちゃっ!小さすぎて写真ではわからない子ガニしかいない。ちなみにアカテガ二が産卵のために森から海に出ていくのは六月下旬からだそうだ。

 三崎口駅から徒歩三十分圏内に黒崎の鼻、小網代の森とほかにはないユニークな自然環境が隣接するこの地は、自然歩きの穴場。子供を連れてもよし、子供に帰るもよし。

今回1万8339歩 距離約13km

(まいた・ようへい=芸能ライター)