山の手一周ウオーク

山の手
「山の手一周ウォーク」の様子

 たとえどんなに長い距離だとしても、歩くくらいはできると思っていた…。

 しかし、いくら前に前にと思えども、足が全く動かない。これはキツい。マジでキツい。

 ウオーキング、あなどれん!

 時は二ヶ月半ほどさかのぼる。万歩クラブ、ゴールデンウイークの恒例企画に「山の手一周ウオーク」がある。一般参加者がいつも以上に多いフリーウオークで、山手線沿線を歩く十キロ、二十キロ、三十五キロのコースがある。やるなら当然、山の手一周三十五キロでしょうと意気揚々と申し込む。

 参加者は総勢五百九十四人。順に上野公園をスタートする。池袋方面へは不忍通りを歩くのでややショートカットだが、それ以外はほぼ山手線に沿って行く。参加者はコース地図を手に、思い思いのペースで歩いていく。ひとり黙々と歩く人、友達とおしゃべりしながら歩く人、家族連れもいて、いつもとは違う光景が新鮮だ。万歩クラブのタオルを首に巻いて歩く人が多く、仲間意識とライバル意識が自然と芽生える。負けたくないと、ついつい歩みも速くなる。ちょっとしたマラソン感覚だ。

 歩き始めて二時間半、ようやく見慣れた景色が現れた。新宿だ。上野から新宿まで歩いたという事実に驚くが、まだまだ三分の一、先は長い。ここからは渋谷、恵比寿、目黒、五反田と仕事でよく行く街が続く。しかし電車であっという間の距離でも歩くとなるとまるで違う。しかもすでに十数キロ歩いているのだ。それまでイライラしていた赤信号を待ちわびるようになる。

 目黒に着いたのが午後一時。歩き出して四時間半。あと十四キロもあることに心が折れかける。楽しく歩けるのは二十キロまで。初めて己の限界を知る。

 今、「足が棒のようになる」という言葉を体感している。これは足ではない。棒だ。歩行者天国の人混みに銀座に着いたと気がついた。ということは、ゴールまであと六キロ。え…まだ六キロあるの⁈信号のたびガードレールに腰かけ休む。ご年配の方に追い抜かれ、みるみる背中が遠くなっていく。

 秋葉原到着。ゴール目前なのに人人人…で前に進まない。亀やカタツムリもかくやの歩みで最後の気力を振り絞る。

 あぁ上野公園だ。ウマ村事務局長の長い顔、リーダーたちの笑顔に迎えられ、ゴール! 

 計八時間の果てしない長旅だった…なんという達成感。五十にもなると自分の限界を求められることはほぼなくなる。自分の枠を知っているから、その枠内で済ませてしまうのだ。久しぶりに自分の枠を飛び越え、キツくはあったが、楽しかった。

今回4万7936歩 距離約35km

(まいた・ようへい=芸能ライター)