東野圭吾12橋巡り

東野圭吾
日本通りの上には高速道路が走る

 万歩クラブの年間スケジュールを見たとき、「お、面白そう」と興味を引かれた『東野圭吾「祈りの幕が下りる時」12橋巡り』と題された例会。いわゆる聖地巡礼系かと思いきや、少し違う。

 本作は加賀恭一郎シリーズの集大成ともいえる力作で、主演・阿部寛、ヒロイン・松嶋菜々子で映画化もされた。ある罪を抱え、逃走する父が娘との面会場所としてカレンダーの各月に書き込んだ日本橋界隈の十二の橋。その謎を主人公の加賀刑事が解き明かすわけだが、印象的なのは日本橋と左衛門橋くらいで作中に十二の橋すべて登場するわけではない。企画した金子眞佐雄リーダーに話を聞くと、「どんな橋か知りたくなったんですよ」と。作中での描写がなかったからこそ、実物を見てみたいという気持ちは、なるほどよくわかる。

 両国駅をスタートし、柳橋へ。ほとんど流れの感じられない深緑色の神田川に幾艘もの屋形船が浮かんでいる。古い花街らしい光景を目で楽しみながら歩を進める。と、私たちと同じようなウオーキングのグループとすれ違う。さらにもう一団体。江戸情緒を感じられるここら一帯は人気の街歩きのコースなのだろう。

 浅草橋、左衛門橋、常盤橋、一石橋と巡りながら、ふと気になった。それぞれに由来と歴史があるのはさすが水の都・江戸を支えてきた橋だなと感心したのだが、渡っているとあまり橋という感じがしないのだ。普通に道路を歩いている感覚。どうしてなのかと辺りを見回し、気がついた。川の上を高速道路が走っているからか、視界にあまり水が入ってこないのだ。川が見えないから橋だとわからない。その最たるものが日本橋だろう。

 日本橋川から見上げると石造りの美しい二連アーチ橋なのだが、その上を歩いているときは、真上を走る首都高の威圧感と有名な麒麟像のインパクトが強すぎて、川のほうにはなかなか目が行かない。渡りきり、首都高にかかげられた「日本橋」の看板を見て、あ、そういえば日本橋だったなとあらためて気づく始末だ。

 その後の江戸橋、鎧橋、茅場橋の上にも首都高の屋根はかかっていた。首都高は用地取得のたやすさからそのルートの多くを河川上空に採っているそうで、ということは、東京の空には高速道路というとても重要な物流の川が流れているのだな…そんなことをふと思った。

 実は今回は下見に同行させてもらったのだが、本番の例会は雨で中止となってしまった。十一月二十三日に順延開催されるようなので、興味を持たれた方は、ぜひ。

今回1万4685歩 距離約10km

(まいた・ようへい=芸能ライター)