オオムラサキを追って

都心から一時間半ほどの距離にありながら、山や渓谷など豊かな自然に触れられる埼玉県嵐山町。菅谷館跡など史跡も多く、歴史も体感できる絶好のウオーキングスポットだ。

 コースにある「オオムラサキの森」では、日本の国蝶の羽化の時期に当たる。実は私、かなりの虫好きなのだが、生きたオオムラサキを一度も見たことがない。故郷の北海道・十勝は雄大な自然にあふれた場所ではあるが、虫好きの少年にとっては残念な地でもあった。虫の生態系が本州以南とはかなり違い、地元で大型の昆虫をほとんど見かけなかった。カブトムシもカマキリもトノサマバッタも…。ついに自然の中であの美しい蝶と対面できるかもしれない…そんな期待に胸を躍らせながら、武蔵嵐山駅を出発する。

 雑木林を整備した「オオムラサキの森」は多くの生き物が暮らす昔ながらの環境を維持している森で、活動センターではオオムラサキの幼虫を集め、成虫へと羽化させている。

 ネットで守られたエノキの枝にじっと目を凝らすと…サナギを発見!美しい緑色に独特なフォルムは見ていて飽きない。飼育員の七戸均さんの「昨日も一頭羽化して、森に放しましたよ」との言葉に、森の中でのその子との出会いを期待し、胸がふくらむ。男性会員たちは「今年は何頭羽化したのか?」「(同じくオオムラサキの生息地として有名な)隣の小川町との飼育法の違いは?」など七戸さんを質問攻めにし、その輪は解けることがない。オオムラサキと身近に触れ、皆、虫好きの少年に戻っているのだ。

 結局、森の中でオオムラサキを見ることはできなかった。肩を落とす私に、「次のラベンダー畑にいるんじゃない?」とウマ村事務局長がテキトーなことを言う。いやいや、オオムラサキは花の蜜、吸わないから!

 続いて訪れたラベンダー園「千年の苑」。紫で彩られた園内は大勢の人でにぎわっていた。ラベンダーは時を遡るときの香り(by『時をかける少女』)…先ほどから少年時代に帰っている私の気分にもピッタリだ。

 そして、渓流の水音も涼しげな嵐山渓谷。秋になると町名の由来のとおり京都の嵐山を彷彿させる見事な紅葉で彩られる。道行く私たちのかたわらを悠然とオニヤンマが飛んでいく。

 歴史、森、虫、花、川、山…三時間歩くだけでこんなに贅沢な体験ができる。図らずも今日は山の日。自然に親しみ、その恩恵に感謝する絶好の機会ではないか。家から出て、自然と触れ合ってみてはいかが?

今回1万7252歩 距離約11km

(まいた・ようへい=芸能ライター)