都会にもこんな自然が

0.02㌔、0.02㌔、0.05㌔…ウオーキングアプリをチェックして愕然とした。三日間で百㍍も歩いていない!理由はわかっている。雑誌の〆切だ。この一週間で〆切10号、11号、12号、13号が次々と上陸し、さらには大型(単行本)の〆切14号が控えている。家から一歩も出られない状態なのだ。万歩クラブのおかげでどうにか歩ける体になったのに、すっかり引きこもりライターに初期化…。

 近所にいいウオーキングスポットでもあれば、空き時間に気分転換がてら歩きにいけるのに…と例会スケジュールを見ていたら、ありました!等々力渓谷散策例会。最寄りの等々力駅は自宅から電車で十五分ほど。まさにご近所例会だ。

 等々力渓谷は武蔵野台地の南端を谷沢川が浸食してできた東京都二十三区内唯一の渓谷。「夏の例会にはうってつけ。ここは穴場ですよ」と竹内栄リーダーが胸を張るのもなるほどの、異世界が広がっていた。

 入り口に温度計があり、地上と渓谷内の気温差が三度以上あることがわかる。渓谷に降りると、ひんやりとした湿った空気に包まれる。なんだこのダンジョン(迷宮)感は…。濡れた木道の脇を谷沢川が流れ、頭上をふさぐように緑の木々が生い茂る。渓谷の規模としては小さいのだろうが、ここは東京の世田谷区だ。日本有数のお洒落な街自由が丘はここから余裕で歩いて行ける。そんなザ・都会の真っただ中だからこそ、別世界に迷い込んだワクワクとトキメキがある。

 一㌔ほどの渓谷内には等々力不動尊や不動の滝、横穴古墳に日本庭園と見どころも多く、アスファルトの照り返し熱を逃れ、涼をとるにはもってこいだ。

 近所にこんな素晴らしい場所があったのに、知らずに二十余年過ごしていたのか…と自らの不明が情けなくなる。

 渓谷を出たあとに寄った善養寺も非常に面白い寺だった。真言宗の密教系のお寺なのだが、朝鮮半島の魔よけの獣・海駝が狛犬のように門を守り、本堂は中華風。境内には黄金の大日如来や儒教風の石像、インドのガネーシャにアイヌ民族の守護尊、多摩川の精・かっぱのたま坊とさまざまな異文化が混在し、キッチュな空間を作り上げている。

 身近にある異世界を堪能し、かなりリフレッシュできた。さあ、どんと来い、〆切!

今回1万2728歩 距離約8km

(まいた・ようへい=芸能ライター)