多彩な顔の隅田川

ドラマや映画を見ていると川沿いの道や土手を歩くシーンがよく登場する。川は、感情表現を演出するのにとても有効だからだ。キラキラと日の光を反射する水面が背景にあれば「希望」を、夕陽に輝く黄金色の川面は「郷愁」や「切なさ」を…。川の情景だけで、人はある種の感情を喚起させられる。

 ウマ村事務局長から「隅田川ウォーク」の下見の誘いがあった。さわやかな秋風吹くなか、隅田川のほとりを歩く名物例会で、春の山の手一周ウオークと並び一般参加者も多いそうだ。

 だが、その前日に超大型の台風15号が関東を直撃した。午前十時、浅草・隅田公園の気温はすでに三〇度超え。そして、目の前を流れる隅田川は泥の川と化していた…。「今日って歩いちゃダメな日じゃない?」と私が問うと、「だよね」とウマ村さんもうなずく。それでも中止せず、ショートコースに変更して吾妻橋下から歩き始めた。

 両国橋までは首都高が屋根となり、日陰の道をさくさくと進む。ガンジス川のような土色の隅田川を、松本零士デザインの近未来的な観光船が滑るように進んでいく。こんなシュールな光景は今日しか見られないぞとだんだん楽しくなってきた。

 しかし、日陰が途切れると汗が噴き出し、一気に歩みは遅くなる。折り返し地点の清洲橋に着き、もう限界とカフェに飛び込んだ。三十分ほど涼をとり、回復したので後半戦へ。

 勇んで歩き始めるとウマ村さんに「逆だよ」と指摘される。首をひねりつつも、方向感覚には自信がないのでウマ村さんについていく。しかし、来た道の対岸を戻っているはずなのに、景色があまりにも違う。前に見えるは永代橋…って、先に進んでるやん!ウマ村さんの方向音痴のせいで三千歩ほど余計に歩き、どうにかゴール。

 予想外の熱暑耐久ウオークになり、土色の川に抱く感情は、ただただ疲れた…。同じ川でもその日の状況で生まれる感情は違うのだ。本番ではどんな感情が生まれるのか楽しみだ。

今回1万5932歩 距離約10km

(まいた・ようへい=芸能ライター)