郷愁の大井川鐵道(前編)

 SL(蒸気機関車)がある種ファンタジーな乗り物になるか郷愁を誘う乗り物になるかは、世代と生まれた土地によって変わるのだろうが、私はひどく懐かしい気持ちでその汽車に揺られていた。北海道の田舎町の出身なので、物心ついたときにはまだSLが走っていたのだ。

 大井川鐵道は静岡県の大井川流域を拠点とし、日本で唯一、SLを年間三百日以上営業運転している鉄道としてその名を知られている。新金谷駅から千頭駅までの約二十分、古い

車両の木製の席に座り、石炭が燃える匂いに包まれながら車掌さんが吹くハーモニカの鉄道唱歌を聴く。時を超える贅沢なサービスを堪能し、なるほどこれは鐵道ファンならずともリピートしたくなるなと人気に納得する。

 千頭駅からバスに乗り換え、寸又峡へと移動する。歩くのは寸又峡プロムナードコースだ。先頭を田中満月義リーダーが行き、太田弘子さん、佐藤澄さんのレジェンドお二人(合わせて御年百六十九歳!)が続く。今回はいつも楽しいおしゃべりで盛り上げてくれる万歩のムードメーカー・武藤厚子さんのまな娘、綾さんも参加しており、普段の例会より年齢の幅が広い。

 周囲を見渡せば、カップルを含め意外に若者たちが多い。その理由は目的地の「夢の吊橋」が近づいてきて判明した。紅葉した木々の向こうに見え隠れするダム湖の色が、幻想的なエメラルドグリーンなのだ。

 若者が愛してやまない“映える”景色が目の前にあるのに、吊橋にはなかなかたどり着かない。一度に渡れる人数が十人ほどなので入り口で渋滞が起こっているのだ。待つこと三十分。ようやく私たちの番になった。

 高さは八㍍とそれほどでもないが、支えているのが鉄線のみで、その見た目の頼りなさに恐怖を覚える。しかも、かなり揺れる。直前を歩く二十代の女性たちは「キャアキャア」と悲鳴を上げながら、まるで進みやしない。後ろのレジェンド二人から「こんなおばあちゃんが平気なんだから、しゃんと歩きなさいな」と激励の声が飛ぶ。

 渡り切り、ほかのメンバーを待っていると、半泣き状態でヨロヨロとゴールした人が…最年少の綾さんだ。高所恐怖症なのだそうだが、そんな彼女のかつての職業はキャビンアテンダントだとか…なぜ?

今回9403歩 距離約6km

(まいた・ようへい=芸能ライター)