なじみの街 渋谷

 初めて勤務した編集部があったから、三十年来なじみの街なのである、渋谷は。にもかかわらずここ数年、駅周辺で迷うことが多くなった。行けども行けども目指す場所に到着せず、ぐるぐる回り続けたこともある。「渋谷ダンジョン」という言葉を耳にし、言い得て妙だとひざを打つ。一カ月前にあった道がふさがり、新たなルートが生まれているのは、まさに迷宮。日々変化し続ける生き物のような街…それが今の渋谷である。

 街の再開発も二〇二〇年を迎え、ようやく落ち着いたので、新しくなった渋谷を歩いてみよう。谷底に何本もの高い塔が林立している図を思い描けば今の渋谷の街をイメージしやすいかも。谷の上から坂を下り、一番高い塔(渋谷スクランブルスクエア、地上約二百三十㍍)のてっぺんまで。今回の万歩道は横移動ではなく垂直移動である。

 出発点は新装オープンした渋谷パルコ。屋上庭園までつながる外階段を景色を眺めながら上っていく。ファッションビルの代表だったパルコだが、今や最も活気があるのはポケモンセンターやジャンプショップが入ったフロア。中でもニンテンドーショップは入場制限されるほどの盛況ぶりだ。

 若者と外国人観光客がハイセンスなキャラクターグッズに目を輝かせている。知り合いの若手編集者がここで買い物をしたら会計が六万円を超えたという話に、それ電化製品の額! とおじさんは仰天したのだが、確かにオシャレで魅力的なグッズが多い。ファッションからカルチャーへ…これが渋谷の変化の方向性なのだろう。

 スペイン坂を下り、センター街へ。かつてはティーンであふれていたこの通りも、今では外国人の多さが目につく。

 渋谷フクラス、渋谷ストリームと新しい塔を眺めながら、目的の渋谷スクランブルスクエアに入る。十四階でチケット(大人は当日料金二千円)を買い、エレベーターとエスカレーターを乗り継いで四十六階の展望回廊、そして屋上へ。三百六十度パノラマの圧倒的な解放感は、ほかの展望台とはまるで違う。天井がないから山の上から東京全体を一望するような、ありえない気分を満喫できるのだ。

 日常の風景の一つだった渋谷の街が、気づいたらこんなにも大きく変わっていた。それが三十年という年月なのだろう。そして、おそらくは自分も変わっているのだ。願わくば良き方向に変わっていることを…。

今回8447歩 距離約5.5km

(まいた・ようへい=芸能ライター)