鎌倉から逗子編

 鎌倉は自宅から電車で一時間弱で行けるもっとも身近な観光地だ。初詣、桜の季節、夏休み、秋の紅葉と行く時期を変え、年に一度は訪れる。ただ、いつも鎌倉駅を起点に江ノ島方面へと西側にしか行っていないことに気がついた。南東側の逗子にはまだ足を踏み入れたことがないのだ。

 …というわけで、自然歩きの達人・宮川隆彦リーダー提案の「鎌倉から海岸線を歩いて逗子まで」というコースをウマ村さんと二人で歩くことにした。だが、初春の海沿いをのんびりと歩くという勝手なイメージで歩きだしたのがまずかった。想像の斜め上を行くタフなコースだったのだ。

 午後二時、鎌倉駅を出発。本覚寺の脇を通り、妙本寺、ぼたもち寺(常栄寺)、八雲神社、安養院と寺社の前を通り過ぎていく。百を優に超える歴史ある寺社が並び立つ、いかにも古都・鎌倉らしい街の眺めに、忙しない現実からふわっと心が遊離していく。これが鎌倉を歩く醍醐味だ。

 そこから南下し、逗子に入ると、やがて、ユーミン(松任谷由実さん)のライブでもおなじみのリゾート施設・逗子マリーナが見えてきた。無理やり植えたヤシの並木がバブルの夢の跡のようで、どうにも痛々しい。その異国風の景観から、ここはよくトレンディードラマのロケ地として使われていたっけ。あれから三十年、バブルの端っこで浮かれていた若者はおっさんとなり、今や違和感たっぷりのヤシの並木道を懐かしさとともにかすかな含羞の念を抱きながら、てくてくと歩いている。

 そこから逗子の海岸沿いを進むのかと思いきや、コース地図をたどるとどんどん坂を上っていくではないか。しかも道は細く複雑に入り組んでいて、方向オンチには手に余る。行き止まっては引き返すが、また行き止まりと目的の大崎公園に全然近づけない。十分程度の道を二十分くらいかけてようやく公園にたどり着いたときには疲れ果てていた。

 一服し、隣にある披露山公園へ移動。ここには猿舎があり、赤ら顔のニホンザルとにらめっこしてほのぼのとした時を過ごす。高台から望む逗子の海も素晴らしい。「ここからの下りは地図にはないですが楽しい道ですよ」と宮川リーダーの伝言にしたがい、地図にない道を下っていく。たしかに野趣あふれる山道で、楽しいというか…険しい(笑)

 「ほぅ」。逗子海岸の砂を踏み、安堵の息をつく、地図の読めないおっさん二人だった。

今回1万5623歩 距離約10km

(まいた・ようへい=芸能ライター)