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コラム・マンガ

学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句 第17回

学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句 第17回

28歳の若さで学研の編集者と俳人、2つの顔をもつ中西亮太が、毎回オススメの季語と俳句を紹介していくこのコーナー。
多くの小中学生が、国語の俳句の問題を苦手としていると聞きます。このコーナーを読めば、言葉に対する感性が高められ、俳句の知識も身につきますよ。

第17回 今日の季語「すみれ」(春)

すみれそよぐ生後0日目の寝息

(すみれそよぐ せいごゼロにちめのねいき)

神野紗希(こうのさき)

感覚を表現する

本を読むとき、そこに描かれている場面の様子や、登場人物の気持ちがありありと想像できることはありませんか? 文字としての情報を超えて、感覚的な何かを私たち読者に伝えてくれているのだと思います。今回の作品からもこの感覚的な何かを受け取った人がいるのではないでしょうか。

生まれて間もない赤ちゃんを描いた一句です。「すみれそよぐ」と言い切ることで始まるこの作品は、そよ風が吹くシーンを想像させてくれます。すみれはとても小さい花です。私たちは、小さなすみれがおだやかな風に吹かれる姿を想像しながら、「生後0日目の寝息」に思いをはせるよう導かれていきます。

この作品の醍醐味(だいごみ)は、単に見えることだけではなく、寝息を感覚レベルで表現している点にあります。すみれのそよぎを通して、おだやかで静かな寝息の感じが温もりそのままに伝わってくるような気がします。

景色だけを描く俳句は、時として「それで?」と片付けられてしまうことがあります。こうした感想を乗り越えていく力が、今回の作品にはあるように思います。

俳句のキーワード「字余り・字足らず」

今回紹介した「すみれそよぐ」の句の音を数えてみると、「6・7・5」になっていますね。
俳句は「5・7・5」の十七音を基本としており、「6・7・5」や「6・8・5」など、基本よりも多い音を使うものを「字余り(じあまり)」と言います。逆に、「5・7・4」などのように、基本よりも少ない音でできたものを「字足らず(じたらず)」と言います。
例えば、字足らずの句には次のようなものがあります。

と言ひて鼻かむ僧の夜寒かな

(といいて はなかむそうの よさむかな)

高浜虚子(たかはまきょし)

字余りや字足らずの句の多くは、あくまでも「5・7・5」のリズム感を保ったものです。「〇と言いて~」と一拍ためて読んでみると、「5・7・5」のリズムの範囲内にあるように感じます。

また、「すみれそよぐ」の句も、「すみれそよぐ」の「よぐ」は速めのテンポで読みたくなります。
字余りや字足らずは、あくまでも俳句の基本の音数をふまえつつ、ぎりぎりの範囲内で新たな表現を求めた技法ということができると思います。

 

中西亮太の「学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句」は、第1・第3水曜にお届けします! 次回もお楽しみに♪


中西亮太(なかにし りょうた)

1992年生まれ。株式会社学研プラスの編集者。大学生のとき、甘い考えでうかつに俳句をはじめる。過去に、第14回龍谷大学青春俳句大賞最優秀賞、NHK-Eテレ「俳句王国がゆく」出演など。「艀」(終刊)を経て、「円座」「秋草」現代俳句協会所属。俳句とは広く浅く長く付き合いたいと思っている。春の作品に〈春月の寝息に混じりゆくごとし〉。

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