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12月

音楽の3大要素といわれているものに、メロディ・ハーモニー・リズムがあります。曲を仕上げるにあたり全体のストーリーや形式を把握していただいたら、次は音楽の3大要素の出番です。
まずメロディ。曲を好きになるもっとも大きな理由は、印象的なメロディにあるのではないでしょうか。ですから、はじめにメロディをしっかり覚えてもらいましょう。家事をしながら、散歩をしながら、仕事の合間になど、日常の生活のなかでメロディを口ずさみながら覚えていただくと、ラクだと思います。
次にハーモニー。左手のバスにある「ドとソ」に着目してもらいましょう。ポイントになる和音が見つけやすくなります。「ド」がある部分はⅠの和音、「ソ」はⅤの和音である場合が多いですから、これがわかってくると「トニック」と「ドミナント」がはっきりしてきて、「カデンツ」が感じられるようになります。そうすると音楽の区切りが明確になります。余力があれば、ⅡやⅣの和音の部分について、「開放的に」とか「回想的に」とかいった「あいまいな」言葉をあえて使いつつ、演奏の指針を説明します。なぜなら「サブ・ドミナント」にあたる部分は、そういう性質の曲想のはずだからです。
ただし調性によって「CとG」(ハ調)、「GとD」(ト調)、「FとC」(へ調)といったように「ドとソ」は変わりますので、ここはよく理解していただけるように注意してください。
最後にリズム。これは冒頭にあるテーマのリズムをよく見ていただき、ほかの部分にそのリズムが使われていないか一緒に探します。テーマのリズムを常に使っていたり、それが変化していたりする場合も多いため、リズムによる曲の統一感を把握しやすくなると思います。
音楽の3要素を切り口にしていくことは、専門的なアナリーゼのようで、難しく感じられるかもしれません。しかしここが盲点だと私は考えています。むしろ、ある程度理屈っぽく攻めたほうが、大人の方には知恵という武器がありますから、曲の仕上がりが早くなるのではないでしょうか。ただし、細かくて難しい分析は避けること。なるべく少ない原則でシンプルに進めていくことが、大人のピアノの場合は大切です。

黒田篤志

11月

1曲仕上げるのは大変なことです。ピアノを始めて間もない大人の方は、どこから手をつけたらよいのかわからず、長くかかりそうな練習に臆してしまうことも多いでしょう。
私は「曲の最初から最後まである程度のテンポで統一感をもって弾きとおすこと」ができたとき、「曲が仕上がった」と考えるようにしています。そのための段階的な方法を、大人の方にはお伝えするようにしています。
まず、曲全体の形式をお話しします。そのさい、曲はABAで構成されていることにします。音楽の形式はいろいろありますし、前奏やコーダを伴う場合もありますから、この単純化はやり過ぎかもしれません。しかし、なるべく少ない原則で形式を説明することが、とくに大人の場合は大切だと考えています。
つぎに、ストーリーを一緒に考えます。ポイントは「起承転結」。物語の進め方もいろいろでしょうが、あえてこれに従います。たとえば「水戸黄門」のあるシリーズでもいいし、勝手に創作した「恋愛物語」でもかまいません。「こんなストーリーはいかが?」と投げかけ、最終的にはご自身が大切になさっている過去の物語と重ね合わせてイメージを作ってもらいます。
ちなみに、そのイメージを、根掘り葉掘り伺うことは控えます。恥ずかしいかもしれませんから。
なお、形式とストーリーとをからめるならば、Aが「起承」、Bが「転」、Aに戻って終わりが「結」です。
「曲を仕上げる」には、音を正しく弾くことが条件であることは確かです。そのせいか、ピアノの練習は、正しい鍵盤を下げることから始まると考えられがちではないでしょうか。しかし、大人の方やピアノに不慣れな方がそこから入ってしまうと、木ばかり見て森から抜け出せない状況に陥ってしまいます。どんなに短い曲でも、練習にはある程度の日数がかかりますから、つらくなってしまいますよね。
曲全体の枠組みを把握してもらい、曲の各部分を1本の線でつなげてもらえば、見通しを立てやすくなります。そして1本の線は、その方にとって大切な物語ですから、個性をベースにした統一感を、曲にまとわせることができるのではないでしょうか。
こうした取り組みから始めることで、攻略法がハッキリするだけでなく、練習のためのモチベーションも持続させることができるはずです。

黒田篤志

10月

ピアノが上手に弾けるようになるためには、専門的な厳しいレッスンをある程度受け続けなければなりません。ところが、私の教室に来てくださっている大半の方は、そうしたレッスンに敷居の高さや苦しさを感じられた大人の方ですから、「上達するために努力を続ける」という正攻法が、かえってアダになることもよくあります。
こんなときは、「癒し」「個性」「貢献」というキーワードをお伝えすることにしています。
ピアノはつい頑張ってしまうもの。しかし、上達を考えなければ、ピアノは自分を無償で受け入れてくれるやさしい存在になります。そっと寄り添っていてくれるピアノが、音でカラダの中の汚れを洗い流してくれるような感覚を味わうことが「癒し」です。
「個性」は、今の自分を肯定することです。芸術家の作品は、基本的に大人のために作られていますから、豊かな人生経験によって培われた個性があってこそ、はじめて作品のよさを感じられると私は考えています。弾きたい曲が見つかったときは、そうした個性が作品と共鳴する稀有な機会が訪れたということ。「まだ弾けるレベルではない」というように、今の自分を否定してせっかくのチャンスを逃すのではなく、曲を好きになった自分を肯定的に受け入れて、少々難曲でも挑戦するべきだと思います。
「貢献」は、ボランティアなどの社会活動です。私は毎月1回、介護施設で慰問演奏会を行っていますが、最近は、教室の方と一緒に訪問し、その方の独奏や私との連弾を披露しています。むしろ、私がひとりで演奏するよりもウケがいいことがしばしばですから、演奏のレベルではなく、ピアノを介して誰かのために行動することに、意義があるようです。
「癒し」の場合は恋人、「個性」の場合はよき理解者、そして「貢献」の場合は社会との仲介者。共通しているのは、ピアノが「自分を認めて自分と真摯に向き合ってくれる人」のような存在であることです。上達をあえて最大の目的にしないことも、大人のピアノの秘訣ではないでしょうか。

黒田篤志

9月

はじめまして。私は現在、栃木県小山市で大人のためのピアノ教室を開いています。教室の名前は『レント』。いろいろな意味で「ゆっくりと」という想いを込めています。
アマチュアでもプロ並みの素晴らしい演奏をされる方が増えている一方で、ピアノへの憧れは人一倍強いのに、「まったく弾いたことがない」「少しかじっただけ」「幼いころの厳しい練習がトラウマになっている」という方も、大人にはかなり多いように思います。ピアノをはじめる第一歩がなかなか踏み出せないのですね。
こうした大人のピアノ事情があるなか、勇気をもって第一歩を踏み出された方々が『レント』に通ってくださっているのですが、当初多かったみなさんの悩みは、「指が動かない」「楽譜が読めない」「ピアノを持っていない」でした。
実は、私はこれらの悩みに真っ向からは向き合わないようにしていました。「指はそのうちうまく動きますよ」「楽譜はだんだん読めるようになりますから」「ピアノは欲しくなったら買ってください」といった具合。まるでペテン師ですね。しかしこれには、私なりの理由があります。
自分が気にしていることに触れられると、誰でも緊張します。とくに大人になってからピアノをはじめられた方は、「もういい年齢だし練習の蓄積がないから指は動くはずない」「頭がよくないので楽譜は理解できない」「ピアノを習いに来たのに楽器を持っていなくて申し訳ない」などと、ただでさえ否定的な思い込みに陥りがちなのに、その辺に無粋に踏み込まれると無理に構えてしまいがち。そうすると緊張が生じ、ココロとカラダが硬直します。硬直はピアノの最大の敵ですよね。それだけならまだしも、「恥をかいてまでうまくなる必要があるのだろうか」と疑問を抱かれてしまうかもしれません。こうしたことをざっくり考えて、真っ向勝負はやめたのでした。
大人のレッスンの場合、ご本人が気になさっているところには、直接踏み込まないことが大切です。そしてしばらくしてから、さりげなくそこに触れて次の方向性を探ることができれば、なおよいのではないでしょうか。

黒田篤志

黒田篤志 くろだ・あつし
1973年生まれ。早稲田大学修士課程修了。日本アマチュアピアノコンクール7位入賞。
出版社にて楽譜と書籍の編集を担当。現在小山市で、大人のピアノ教室“Lento レント”を主宰するかたわら、フリーの編集者、ピアニストとして活動中。
http://ameblo.jp/pianote0519/

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