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子育て

スポーツメンタルトレーナーに聞く 子どものやる気をぐんと引き出す声かけ【第2回】

スポーツメンタルトレーナーに聞く 子どものやる気をぐんと引き出す声かけ【第2回】

お子さんへの声かけについて、アメリカでスポーツ心理学を学び、メンタルトレーナーとして活躍する伴 元裕さんに引き続きお話を伺いました。第2回はお子さんのやる気を引き出すための心理学的なアプローチと声かけについて、具体的な実践例を交えながらご紹介します。

やる気の源泉は「自主性」「関係性」「有能性」

試合や大会などでの勝ち負けはあくまでも経験に過ぎません。お子さんのやる気を引き出して成長につなげるためには、それらの経験を通じて、どんなことを学べたかに意識を向けることが大切です。やる気を引き出す方法は十人十色ですが、具体的な声かけのお話をする前に、まず心理学的側面から見た「やる気を出す」条件についてご紹介します。

“楽しい”と感じる源泉は、「自主性」「関係性」「有能性」の3つであると考えられています。

心理学解説図
心理学の自己決定理論では、人は生まれ持った3つの欲求を満たされると、夢中になるとされています。

みなさんも小さなころ、「宿題をやりなさい!」などと保護者の方から怒られたり、強要されたりすると、かえってやる気が起きないという経験をしたことがあるのではないでしょうか。そこに「自主性」はなく、こなすだけでは「有能性」も感じられず、やるのは親に怒られないためだけで「関係性」も弱いのでは、「楽しくない」=「やる気が起きない」のも当然です。一方、自らの意志で行動すれば、やる気が生まれ、成長する可能性が大いにあります。

また、子どもに限らず大人でも、「うまくなった」「進歩した」と自分で感じられれば、やる気がわいてくることが多々あると思います。くなりたい、うまくできている感覚を持ちたいという欲求を「有能性」と呼びます。練習などを通じてそうした感覚を持たせてあげることが重要です。

自主性をはぐくむ「WATER」サイクル

では、お子さんが自らの意志で行動するために大人はどのように声をかければいいのでしょうか。私が考えた主体性をはぐくむ「WATER」サイクルというものをご紹介しましょう。

<trpx;">5[Take(実践)]が終わったら、大人が「今日どうだった?」などと鏡で照らすようにお子さんの感想を引き出す、[Reflect(反射する)]をします。

1 まずお子さんに「どんなふうになれたらうれしい?」と聞き、お子さんの[Wish(なりたい姿)]をいっしょに導き出します。
2 次に「そうなるためにはどうすればいい?」と聞いて[Action(行動)]を考えます。
3 「やってみよう!」と、お子さんが考えた[Action(行動)]の実施を促します。それが[Take(実践)]です。もしもっと有効な方法があれば、お子さんに提案してもよいでしょう。
4 そのときに保護者や指導者などの大人は[Encourage(励ます)]、つまり「きっとやれる!」「サポートするよ」などの声かけで背中を押してあげます。

このときに注意したいのは、あくまでお子さんが決めるということ。大人がなってほしい姿を押し付けるのではなく、お子さん自らが決めて行動するようにしてください。[Reflect(反射する)]から次の[Wish(なりたい姿)]を導いて、このサイクルを繰り返していくと、自然な流れで自主性がはぐくまれていきます。私がメンタルトレーニングの指導をしているスポーツクラブでも、保護者の方に実践してもらっています。

伴式のメンタルメソッド
子ども自身が主体性を持って取り組むためには、自分で決めたことを自らの意志で続けられるようにするのが大切です。

40秒、否定せずに子どもと向き合う

[Wish]を引き出すときなど、お子さんと会話する際に気をつけなければいけないのは、意見を否定しないことです。
心理学的にも有効とされている、40秒ただひたすらお子さんの話に耳を傾け、否定しないようにするという方法があります。これを「40秒の思いやり」と呼びます。
会話の中で大人が期待するような回答は得られないかもしれません。しかしここで大切なのは中身ではなく、[投げかけ]→[返事]までの内省の時間なのです。特にお子さんの年齢が低いほど、大人がしっかり待つことが必要です。
もし話を引き出すのが難しいなら、感想を書いてもってもいいですし、絵にしてもらうのでもいいです。時には「こういうこと?」などとお子さんが答えやすいように手助けをしてもよいでしょう。

どんなささいなことでもいいから、自分で発した言葉で何か気づきが得られて、お子さんが[Wish]を定めることができれば、あとは、大人はお子さんがなりたい姿になろうとするのをサポートするだけ。「WATER」サイクルに落とし込んで、お子さん自身ができそうだとやる気をもってチャレンジできるような環境を作ってあげることが大切です。

まずはお子さんの話に耳を傾けることから始めてください。中身ではなく、お子さん自身が考え、発することで気づきを得られることが重要なのです。

第3回もお楽しみに!

取材・執筆:松葉紀子(スパイラルワークス)

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伴元裕(ばん もとひろ)

監修者:伴元裕(ばん もとひろ)

7年間の商社勤務後、スポーツ心理学を学ぶため渡米。デンバー大学大学院にてスポーツ心理学を修了。帰国後、中央大学でスポーツ心理学の研究を続けながら、プロアスリートやビジネスリーダーに対して、最先端のメンタルトレーニングを提供。2019年にはNPO法人Compassionを設立。

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