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9月

名器との出逢い

突然ですが、読者のみなさまは何か楽器を演奏されますか?楽器にもアコースティック、LM、弦楽器、管楽器、打楽器etc...、いろいろありますが、どんな楽器であれ、「そのとき演奏する楽器」とは一期一会と言いますか、やはり“出逢い”のご縁があっての“演奏”、そして“音楽”があると思うのです。

ちなみに今月のコーナー担当、私(か)はピアノを弾きますが、今自宅にあるのは、マホガニーのボディに黒いズン胴の脚、上面が貼り替えられ側面だけ象牙の鍵盤…という良くも悪くもハイブリッドな、おそらくとんでもなくご老体のYAMAHAのG2というグランドピアノです。30年以上も一緒ですから弾き心地がまるで家族のようです。詳しくは知りませんが、もしかすると100年近い歳月を過ごしているかもしれないこのピアノ。中古というとあまり聞こえは良くないですが、特に楽器については、年を経てこそ出せる音が魅力的!と個人的には思っています。

さて、アマチュア中のアマチュアの私ですらこうして楽器へそれなりの愛着を持っているわけですから、プロの方々は当然、と思いますが、作曲家にも楽器への強い愛着心があったのだろうなぁ…と改めて思ったのが、久元祐子先生のコンサート「名曲であじわう世界3大ピアノの響き」。5月18日と少し前のことになりますが、東京・武蔵小金井の宮地楽器で開催されたこの演奏会、会場に入ると客席にピアノ、ステージに客席、と位置関係が逆転している異空間に、憧れの名器「スタインウェイ」「ベーゼンドルファー」そして「ベヒシュタイン」のグランドピアノが整然と並ぶ姿に圧倒されます。

別の、5台の楽器を一晩で弾くプログラムに取り組まれるときには「一晩にそれぞれ違う相手と5回結婚式を挙げるよう」と、そのご苦労を語られていた久元先生のご腐心もあって、それぞれのピアノたちの際立つ個性にびっくり!だいたい、この3種類のピアノたちが同じスペースに在る、という機会ですらそうは無いのに、1回の演奏会で聴き比べることが出来る…とは何という贅沢!!

楽器それぞれの個性に魅了された作曲家たち、そしてそこから生まれた作品。作曲家たちが強烈な個性を放つその根幹に、彼らの愛器の個性もまた関わっているのではないか…と体感出来るひと時でした。
アンコールは、モーツァルトの〈トルコ行進曲〉を、フレーズごとに3台で弾く、というユニークなもの。まるで小鳥のように忙しく3台を行き来する先生を眺めながら、華やかなスタインウェイ、まろやかなベーゼンドルファー、実直なベヒシュタインの個性を満喫。夢のような時間を過ごしたあとの現実は、あの3台には一桁も二桁も足りない預金通帳を見て涙していたりするわけですが、それでも、かけがえのない時間を過ごすことが出来たのは幸せでした♪(か)

Program
  • 【ベヒシュタイン】
  • グリーグ〈アリエッタ〉
  • シューマン〈愛しい五月、お前はまたやってきた〉〈トロイメライ〉
  • ドビュッシー〈月の光〉/ リスト〈愛の夢 第3番〉
  • 【スタインウェイ】
  • ベートーヴェン 〈ピアノ・ソナタ 第24番 嬰ヘ長調 Op.78 “テレーゼ”〉
  • 【ベーゼンドルファー】
  • W.A.モーツァルト〈幻想曲 K.397(久元祐子:補筆)〉
  • シューベルト〈即興曲 変ホ長調 Op.90-2〉
  • ショパン(リストによる編曲)〈私のいとしい人〉
  • シューマン(リストによる編曲)〈献呈〉

8月

時代を知る 〜番外編〜ピアノ名曲の歴史

今回は、『時代を知る!』の番外編と題し、数々のピアノ名曲が誕生したバロックから近現代までの約250年間で、編集部が独断と偏見(!?)で選んだ30曲が誕生した年に注目してみました。お好きな曲はありましたか?これを機会に、詳しく調べて知識を深めていただくのもステキですね!

7月

またまた定番教本ルネッサンス!? 〜ディスカバリー「バイエル」〜

4月号で、いわゆる“定番”と呼ばれる曲集が再び脚光を浴びる“ルネッサンス”の動きが近頃あるように思います、というお話をさせていただきましたが、このときは《練習曲集》ということで、「チェルニー」「ブルクミュラー」「ハノン」という、定番の練習曲集で名高い3人の作曲家に注目しました。今回は7月、奇しくもピアノの教本(教則本)の王道、ザ・定番!『バイエル教則本』の作者フェルディナント・バイエルの誕生月(7月25日)ですので、「バイエル」と『バイエル教則本』にスポット・ライトを当ててみたいと思います!

フェルディナンド・バイエル(1806−1853)
—— 実像はかなりのマイホーム・パパ!? 家庭と家族を愛した庶民派の音楽家

実は、音楽事典などには「フェルディナント・バイエル」という音楽家について、細かい記述がほとんどありません。項目そのものも無かったりして…。ヒドイ。

ですが、2012年、安田寛氏による『バイエルの謎』(音楽之友社刊)が発刊されたことで、これまで残念ながらあまり関心を寄せられていなかった「バイエル」氏について、驚くほど詳しいことを知ることができるようになりました。ぜひ読者の皆様にもお読みいただきたいのですが、その飽くなき探究心と緻密な研究はまさしく脱帽モノ! 「バイエル」をつつむヴェールが一枚ずつはがされていく様子は圧巻です。

この本によると、フルネームはアウグスト・フェルディナント・バイエル。長く1803年の生まれ、とされてきましたが、安田氏の研究により洗礼記録や戸籍簿から1806年ということが判明しました。優秀なオルガニストだったそうで、ドイツのショット(Schott)社から楽譜を多数出版した作・編曲家でもあります。その多作ゆえに、芸術家としての評価は分かれるところですが、出版点数の多さが、彼の手による楽譜は演奏しやすく人気もあった、ということを物語っています。

おなじみの、106曲からなる『教則本』の初版時のタイトルは

『フェルディナント・バイエル 作品101 母たちに捧げる最も幼い生徒のためのピアノ入門書。
内容:楽典と106の手本、練習曲、訓練、音階、そして小曲。付録:大好きな旋律による楽しい100曲。』

と、“母と子”を強く意識したものだったのです。…ということは、あの連弾の練習曲は「お母さんと子どもが仲良くピアノの前で一緒に演奏する」のがバイエルの理想なんですね! 安田氏の調査によると、バイエルの母はカントル(プロテスタント教会のオルガニスト・楽師長)の家庭に育ち、それなりの音楽的な教育を受けた女性だったそうです。そしてバイエルは、仕立職人(マイスター)を父にもつという庶民的な家庭で、音楽的な素養に溢れる母の手ほどきを受け、カントルとなるべくさらに専門的な研鑽を積んだのだそうです。
この教則本で、バイエルは自らの原点「家庭での音楽教育」=「愛情あふれる家庭での音楽の記憶」をあらわしたのかもしれません。

このことを知って、あらためて楽譜を開いてみると、そこかしこから、匂い立つような家庭のぬ
くもりや家族の愛情が感じられるようです。
『バイエル教則本』にはそんな曲がいっぱいだとは思いませんか? (か)

〈出典〉『バイエルの謎』(安田寛/音楽之友社)

6月

編集部調査!ピアノ発表会で人気曲!おすすめの曲!

全国のピアノの発表会を調査し、よく選ばれる大人気の名曲をランキング形式にしました。
選曲の際、ご参考になれば嬉しいです♪

発表会で大人気! ♪名曲 よく弾かれるBEST10♪
  • 1位 エリーゼのために(ベートーヴェン)
  • 2位 小犬のワルツ(ショパン)
  • 3位 人形の夢と目覚め*(エステン)
  • 4位 メヌエット ト長調 BWV Anh.114*(ペッツォールト/伝J.S.バッハ)
  • 5位 紡ぎ歌*(エルメンライヒ)
  • 7位 樅の木*(シベリウス)
  • 8位 華麗なる大円舞曲(ショパン)
  • 9位 トルコ行進曲(ベートーヴェン)
  • 10位 バラード 第1番(ショパン)
  • 11位〜20位
    アラベスク 第1番*(ドビュッシー)/雨だれの前奏曲(ショパン)/幻想即興曲(ショパン)/月の光(ドビュッシー)/はじめての舞踏会(ストリーボック)/花の歌(ランゲ)/メロディー*(シューマン)/アラベスク(ブルクミュラー)/乙女の祈り(バダジェフスカ)/カノン(パッヘルベル)

やはり、不動の人気を誇る〈エリーゼのために〉。ドラマティックに展開される小ロンド形式、そして美しい旋律…まさに憧れですよね!
ある先生が、生徒さんに「発表会でどんな曲が弾きたい?」と尋ねたところ、何人も「“エリーゼ”が弾きたい!」と熱望し困ってしまった…という話も聞きました。さすが大人気の名曲!
そこで、編集部がおすすめする同レベル程度の名曲をご紹介いたします!

編集部おすすめ!!〈エリーゼのために〉と同レベル程度の名曲♪
  • 紡ぎ歌*(エルメンライヒ)
  • 人形の夢と目覚め*(エステン)
  • かっこう*(ダカン)
  • *(W.F.バッハ)
  • ソナチネOp.13 No.1(カバレフスキー)
  • 森のざわめき(ギロック)
  • 真夜中の火祭(平吉毅州)

はじめての発表会にぴったり! 『ちいさな おんがくかい
ピアノを習いはじめて間もない生徒さんの発表会におすすめです! 生徒パートは単純な繰り返し演奏。先生パートの多彩な音色やリズムを持った伴奏と合わせると、“単純な繰り返し”がすてきな曲になります。先生と一緒に連弾をすることで、たくさんの演奏のヒントを得ることができるようですよ♪

編集スタッフの超!個人的なおすすめ曲
〜今、発表会に出演するなら…この曲にチャレンジしたい!〜

銀波(ワイマン)(く)/ソナチネ 第2,3楽章(ラヴェル)(か)/波のアラベスク*(三善晃)(いも)/過去形のロマンス(吉松隆)(の)/平均率クラヴィーア曲集(J.S.バッハ)(め)/空気の妖精(ブルクミュラー)(な)

*4期のピアノ名曲集』全4巻〔学研パブリッシング 刊〕収載。一部試聴できます♪ 

5月

時代を知る(4) ワーグナー

2013年はオペラ作曲家の巨匠、リヒャルト・ワーグナーとジュゼッペ・ヴェルディの生誕200年! この2大作曲家を祝う、アニバーサリー・コンサートが世界各地で開催されます。日本でも、多くのコンサートが予定されていますので、是非チェックしてみてくださいね。
第4回目の『時代を知る』は、ドイツの作曲家リヒャルト・ワーグナーの生きた時代を見てみましょう。ロマン派歌劇の従来の概念を打ち破り、新しい音楽劇を創造したワーグナー。 それにはどのような背景があったのでしょうか?

「年表」で時代を俯瞰した後、気になる「キーワード(=様々な視点)」を調べてみましょう♪

【キーワード】
ドイツ国民オペラの金字塔/オペラ・コミーク/ゼンパー・オーパー/ドレスデン革命/総合芸術論/ノイシュヴァンシュタイン城/バイロイト音楽祭/ライトモティーフ/亡命
【ワーグナーを取り巻く重要な人物】
ミンナ/ビューロー/ブラームス/コジマ/ハンスリック/ブルックナー/ヴェーゼンドンク夫妻/ニーチェ/リスト/イゾルデ/エーファ/ジークフリート/ベルリオーズ
【同時代にドイツで活躍した音楽家】
ベートーヴェン/マイヤベーア/チェルニー/ヴェルナー/ウェーバー/ブルクミュラー/メンデルスゾーン/シューマン/オッフェンバック/レーガー

4月

定番教本ルネッサンス!? 〜ディスカバリー「チェルニー・ブルクミュラー・ハノン」

2013年、ピアノ教育界ではちょっとしたメモリアル・イヤー・ラッシュです。日本ではザ・定番!今もなお根強い人気を誇る『バイエル・ピアノ教則本』のフェルディナンド・バイエルの没後150年、さらに中級の“練習曲集”といえば外せないカール・チェルニーの生誕222年でもあります。余談ですがチェルニーは猫好きだったそうですので、ニャンニャンニャン♪でさぞかし喜んでいることでしょう…。だからという訳ではもちろんありませんが、最近、『バイエル』をはじめ、『チェルニー』『ブルクミュラー』『ハノン』といった、いわゆる“定番”の練習曲集が再び注目を集めているように思えます。2013年1月号でも取り上げましたが、これらの教本が日本に入ってきて130年以上。以来脈々と使われ続けるこれらの教本たちの昨今感じられる“ルネッサンス”の動きは、安定感だけではない新たな魅力を再発見するチャンスかも!?
そこで!今回はこれら練習曲集の作者にスポット・ライトを当ててみたいと思います。

Carl Czerny(1791-1857)——ベートーヴェン愛!?古典とロマンの間で

“ツェルニー”と発音・表記されることも多いですが、ドイツ語の発音により近いのは“チェルニー”。綴りは「黒」という意味のチェコ語から来ているのだとか(祖先を遡ればボヘミア出身とも)。10歳の時にベートーヴェンにその才能を認められ、演奏家として弟子入りしました。ピアノ協奏曲第1番〈皇帝〉の初演を行ったのも彼です。ただ、チェルニー自身は演奏家としてよりもむしろ師・ベートーヴェンの「ピアノ演奏法」の理念を伝えることに情熱を傾け、膨大な『練習曲集』を作曲し、リストをはじめとする大家を教育したのです。彼の練習曲には、古典派の様式美のなかにロマン派の叙情性が感じられ、音楽史上の単なる“時代のつなぎ役”ではない、独自の足跡をくっきりと残しています。

Johann Friedrich Franz Burgmüller(1806-74)——「ノルベルトのお兄ちゃん」

“ブルクミュラー”といえば、デュッセルドルフ市音楽監督でもあった父親の“ヨハン・アウグスト・フランツ”と弟の“ノルベルト”が音楽史にその名を残す存在です。特にノルベルトは、かのシューマンもその才能を高く評価するピアニスト・作曲家で将来を嘱望されていたのですが、わずか26歳で夭折。親友のメンデルスゾーンが〈葬送行進曲 Op.103〉を書いてその死を悼むほどでした。そんな家族にあってヨハン・フリードリヒ・フランツはピアノ小品の作曲家、サロンのピアニストとして活動。音楽史上はともかくも、200年後の極東・日本の私たちにはなくてはならない、詩情豊かで愛らしい25曲と18曲から成る『練習曲集』を残しています。

Charles-Louis Hanon (1819-1900)——アッシュの憂鬱「だから発音、違うってば!」

テクニック教本といえば、私たち日本人は“ハノン”でなじんでいますが、フランス語は「H(アッシュ)」を発音しないので“アノン”と呼ぶのが実は正解。日本へ入ったときに「H」を発音するドイツ語や英語の楽譜で来てしまったが故の不運なのですが、もしかしたらお墓の下で(苦笑)なのかも…。彼の『60の練習曲による超絶技巧ピアニスト』は、それまでのテクニック教本の定石、クレメンティの『グラドゥス・アド・パルナッスム』(ドビュッシーがこの練習曲をつまらなさそうに弾く娘の様子をピアノ曲にしています)を超え、現在も広く「テクニック教本」として使われています。純粋にフィンガートレーニングを究めるための教本ですが、驚くほど実に合理的にさまざまなパターンが組み合わされていることにお気づきですか?

3月

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013 「熱狂の日」音楽祭へ行こう!!【パリ、至福の時】

今年のラ・フォル・ジュルネ「熱狂の日」のテーマは、【パリ、至福の時】。この「至福の時(L’heureexquise)」という言葉は、19世紀後半のパリを代表する詩人、ポール・ヴェルレーヌの詩「白い月」の最後のフレーズから引用されたものです。芸術監督のルネ・マルタン氏は、この言葉を引用することで、至福の時代——19世紀後半から現代まで、150年間のパリを彩った音楽を再現しようとしています。

至福の時代とは、どのような時代だったのでしょうか?19世紀から20世紀にかけて、パリは世界の芸術の首都として新たな時代を築きあげました。印象主義やスペイン・ブーム、アメリカからはジャズの流入…。さまざまなジャンルの芸術家が集い、交流をし、素晴らしい作品の数々が誕生しました。この頃のパリは、才能豊かな作曲家を多く輩出しただけではなく、ヨーロッパ中の作曲家たちの活動の拠点であったのです。

ところで、イメージ画はごらんになりましたか?気球で空中散歩を楽しむ乗組員はアルベニス、メシアン、フォーレ、ドビュッシー、ラヴェル、サティ、ファリャ、プーランク…そして紅一点!1920年代にパリ芸術家たちのミューズ的存在であった、ピアニストのミシア・セールです。みな至福の時を堪能しているような、素敵なほほえみが印象的ですね。彼らの乗る気球は、パリ万国博覧会の象徴として、パリの空を飛行した気球です。気球からはパリの街並とエッフェル塔などが小さく見えます。…どうやら、どこかに向かっているようですね。そう!この気球の行き先は、日本の会場、東京国際フォーラム!

日本での開催は、今年で9回目。東京での来場者数はなんと延べ526万人だそうです!w今回はルネ・マルタン氏の母国であるフランスの作曲家、パリで活躍したスペインの作曲家たちが紹介されるということで、さらに充実したコンサートになりそうですね。日本ではこれまでにない最大規模のフランス音楽の祭典になるそうです。少しずつ情報が公開されていますので、公式サイトなどこまめにチェックしてみてくださいね♪(の)

ラ・フォル・ジュルネとは!?
ラ・フォル・ジュルネは、フランスのナント市で誕生したクラシック音楽祭です。会場となる複数のホールで、朝から晩まで、短時間のコンサートが一斉に開催されます。創設者であり芸術監督のルネ・マルタン氏のコンセプトに基づき、旬の若手や一流の演奏家を迎えて行われるコンサートが、低価格で体験できるばかりでなく、クラシック初心者からコアなファンまで楽しめる、ユニークでエキサイティングなプログラムも魅力です。現在ではポルトガルやスペインをはじめ、世界各地で開催されています。日本では「熱狂の日」音楽祭と呼ばれ、毎年大変な賑わいです!

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」2013公式サイト

2月

究極の名盤を聴く(2) ショパンワルツ集

2013年、23人の音楽評論家が選んだ究極の名盤ガイド『クラシックCDエッセンシャル・ガイド150』をもとに、歴史に残るピアノ曲 の名盤をご紹介するコーナーの第2回目です。 ヴィルトゥオーゾたちの個性が顕著に現れる作曲家の筆頭といえば、ショパンではないでしょうか。 皆さんは、誰が弾くワルツがお好きですか?

名盤BEST 5
  • 1. ディヌ・リパッティ(1950年)[TOGE12023(SACD), TOCE14026/MONO/ EMIミュージックジャパン]
  • 2. サンソン・フランソワ(1963年)[TOGE12032(SACD), TOCE14124/EMIミュージックジャパン ]
  • 3. マリア・ジョアン・ピリス(1984年)[WPCS22215/ワーナーミュージックジャパン]
  • 4. アルトゥール・ルービンシュタイン(1963年)[SICC30056(Blu-spec CD)/ソニーミュージック、   BVCC37669/ Ariola Japan ]
  • 5. クラウディオ・アラウ(1979年)[4785154/Decca Virtuoso (輸) ]
  • 5. エフゲニー・キーシン(1993年)[BVCC37241/RCA (廃) ]
  • 5. アルフレッド・コルトー(1934年)[TOCE3561/MONO/EMIミュージックジャパン]
  • (輸)=輸入盤 (廃)=廃盤
   
ディヌ・リパッティ Dinu Lipatti [1917-1950 (ルーマニア)]
若き巨匠として絶大な名声を得ながら、白血病に侵されわずか33歳でこの世を去ったリパッティ。ショパンの名手としても、デリケートで洒脱な表現をもって心の襞まで沁みわたる数々の名演を残しています。14のワルツはリパッティの感覚と論理に基づいた独特の配列で演奏され、それは一篇の物語を語っているようです。
〈リパッティの曲順〉
第4番Op.34-3《華麗なる円舞曲》/第5番Op.42/第6番Op.64-1《小犬》/
第9番Op.69-1《別れ》/第7番Op.64-2/第11番Op.70-1/第10番Op.69-2/
第14番〈遺作〉/第3番Op.34-2 《華麗なる円舞曲》/第8番Op.64-3/第12番Op.70-2/
第13番Op.70-3/第1番Op.18《華麗なる大円舞曲》/第2番 Op.34-1《華麗なる円舞曲》
サンソン・フランソワ Samson François [1924-1970(フランス) ]
豊かなインスピレーションと即興性に溢れたフランソワのショパンは、そのどれもが歴史的名演といっても過言ではありません。テンポの急緩、ルバートを用いた揺れ、低音部の強調など、まさに自由奔放な演奏に知らず知らずのうちに惹きこまれていきます。
マリア・ジョアン・ピリス Maria João Pires [1944- (ポルトガル)]
「真珠色の音色」と、作品を深く掘り下げ、繊細で情感豊かな演奏が魅力のピリスですが、このワルツ集は、生気に富み弾力性に溢れた、若い時代のピリスによるもので、聴いたあと清々しい気分にさせられます。曲の順番はリパッティを踏襲しています。

*『クラシックCDエッセンシャル・ガイド150』(学研パブリッシング刊)より

1月

時代を知る!(3) ピアノ教本

2013年、『ぴあのどりーむ』は発刊20周年を迎えます。おかげさまで、全国のたくさんの先生、生徒さんたちにお使いいただいてまいりました。この場をお借りして、皆さまに御礼申し上げます。

さて、今回は、ピアノ教本の歴史を振り返ってみましょう。テクニックをつけるための「ピアノ教本」と、音楽の基礎を学ぶ「ピアノ教本」とがありますが、今回は後者に絞ってみました。文部省(現・文部科学省)の音楽取調掛・伊澤修二が日本に「バイエル教本」を持ち帰ってから130年以上。それぞれの時代に合わせてさまざまな教本が出版されています。

皆さまがレッスンで使用されている教本は何ですか? 習った教本は何ですか?
…そして、これからはどんな教本が登場し、ピアノ指導はどのように変化していくのでしょうか?

【キーワード】
音楽取調掛/バイエル/伊澤修二/メーソン/いろおんぷ/リトミック/ソルフェージュ/絶対音感/音楽教室/ピアノ・コンクール/習いごと/ハノン/チェルニー/ブルクミュラー/ソナチネ・アルバム
<略表記>『教本名』(国/出版社)
【国】
日:日本 独:ドイツ 仏:フランス 米:アメリカ 洪:ハンガリー
【出版社】
音:音楽之友社 全:全音楽譜出版社 ヤ:ヤマハミュージックメディア 春:春秋社 ド:ドレミ楽譜出版社  東:東音企画  学:学研パブリッシング カ:カワイ出版

12月

おすすめ!! クラシックのクリスマス曲

クリスマスの文化史タイトルからはずれますが…。
今、手元に一冊の素敵な本があります。“クリスマス”をテーマに原稿を書こうと資料を探している中で偶然に出会った本です。白水社発行の『クリスマスの文化史』。著者は若林ひとみさん。今から約30年前にドイツに留学されていた若林さん。本場ドイツのクリスマスを体験して以来、ほぼ毎年渡欧し、各国のクリスマスゆかりの地を取材したほか、アンティークのクリスマスグッズの収集も行うなど、クリスマス研究家としても活躍されています。歴史や料理、ツリーやカードの起源、そして音楽と、クリスマスに関連するさまざまなお話がとても分かりやすく書かれています。グッズの写真もとても美しいです!機会がありましたら、ぜひご覧になってみてください。

さて今回は、クリスマスに聴きたいクラシックの作品をご紹介することにいたします。

フランス6人組のひとりで、「パシフィック231」やオラトリオ「火刑台上のジャンヌ・ダルク」で知られるアルテュール・オネゲル Arthur Honegger(1892-1955)の「クリスマス・カンタータ」です。この曲は、狭心症を患い死を目前にしながら書かれた、オネゲル最後の作品です。「われ深き淵より主を呼ぶ De profundis clamavi」「恐れないで Ne craignez point」「世界よ、主を讃えよ Laudate Dominum omunes gentes」の3部構成で、オーケストラ、オルガン、バリトン独唱、混声合唱、児童合唱という編成で演奏されます。第1部はオルガンの不協和音から始まり、重苦しい合唱が続きます。後半も終わりまぢか、突然、児童合唱が、キリストの降誕を告げ(ふっと光が差し込むよう)、第2部に入ります。第2部では、「エサイの根より」「神の子は生まれ給えり」「きよしこの夜」「いざ歌え、いざ祝え」などの有名な曲が、さまざまな言語で幾重にも重なり歌われ紡がれます。その音楽の美しさは言葉にできないほどで、まるで夢の中にいるような気持ちに  させられます。第3部では、バッハのカンタータ「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」でご存じのグレゴリオ聖歌「主を讃えよ」が華やかに歌われ、幸福感に満たされます。25分に満たないカンタータにもかかわらず、闇一色の世界に一条の光が差し込み、それが希望の光へと変わる様が巧みに表現され、とても感動的な傑作です。ぜひこのクリスマス、この1曲をゆっくり聴いてみてください。

ユロフスキ指揮ロンドン・フィル、ベシェク指揮チェコ・フィル、コルボ指揮グルベンキアン財団管弦楽団などのCDが現在入手可能です(2012年11月現在)。
ナクソス・ミュージック・ライブラリーでは、ユロフスキの演奏を聴くことができます。(http://ml.naxos.jp)(く)

11月

脱力ってなに??

ピアノ・レッスンで「力をぬいて」「力みすぎよ」と注意をされた経験は、誰もが持っているのではないでしょうか。
ピアノを弾くときの“脱力”とはどういうことなのか…、ピアノの発音のしくみをまじえて考えてみたいと思います。

●音を出すために必要な力とは?

まずは発音のしくみについて考えてみましょう。
ピアノの音が出るとき…、それは、鍵盤が下げられハンマーが弦に触れたときです。
ピアニストは、鍵盤を押すことで音を出します。 その後は、どんなに鍵盤に圧力を加えても音に変化はありません。
音を出すために必要な力とは・・・
 ① ハンマーが弦に触れる以前の“鍵盤を押す力”(のときなどは数kgの大きな力)
 ② 音を持続させるために鍵盤を“押さえておく力”(*60〜65g程度のとても小さな力)
の2つにわけて考えることができます。

やってみよう!—発音後に必要な力とは?—
1g単位の目盛りがある小さな秤を用意して、1本の指で*60〜65gくらいまで押してみましょう。

  重い? 軽い? ぜひ、生徒さんと一緒に実験してみてください。

*ピアノにより差異があります。

●脱力のタイミングを知る

上記のことから、発音後の力はとても少ない力で良いことがわかります。
たとえば、発音後も力を解放できずピアノを弾いた場合、手や指、腕までもが疲れ、思うような演奏ができなくなってしまいます。
発音のために必要な力を発した瞬間、その直後に鍵盤を押さえておく力だけを残して解放する…これが、楽に、美しくピアノを弾くためにとても大切なことだといえます。

●重力を利用して弾く〜腕の脱力〜

「重みをのせて〜。力をぬいて〜。」
レッスン現場でよく耳にするフレーズです。これは、20世紀初めに、イギリスのピアノ教師、トバイアス・マティらが唱えた「重量奏法」と関係があります。「重量奏法」とは、重力を利用して腕の重みを落下させて打鍵をする奏法で、重量感のあるふっくらとした音が出せます。重力を利用するための不必要な力(=抵抗力)を脱力させる、という意味で「力をぬいて〜」といわれているのでしょう。特にロマン派以降の楽曲(の演奏や音楽の抑揚付けなど)でよく用いられる奏法です。

このほかにも、ピアノを弾くときの脱力については、さまざまな考え方がありますが、大事なことは、どのような目的で、どの部分の力を抜くかです。
近年、“ボディ・マッピング”が注目されています。身体のしくみを知ることで、学習者にはより良い演奏法が、指導者には奏法指導の手がかりが見えてくるはずです。 (いも)

<参考文献> 「こうすればピアノは弾ける」(永冨和子著/学研パブリッシング刊)
  「ピアノ演奏の根本原理」(トバイアス・マティ著/中央アート出版社刊)

10月

究極の名盤を聴く(1) ベートーヴェン ピアノ・ソナタ8番「悲愴」

23人の音楽評論家が選んだ究極の名盤ガイド『クラシックCDエッセンシャル・ガイド150』をもとに、歴史に残るピアノ曲の名盤の数々をご紹介するコーナーです。
名演奏家であればあるほど「自分だけの技術」「自分だけの解釈」を確立していて、その個性が演奏に表れます。同じ曲目の名演奏家たちの演奏を聴きくらべることで、その曲の新しい魅力に気づくかもしれません。楽譜を広げてじっくりと聴いてみてください。

名盤BEST 5
  • 1. ヴィルヘルム・バックハウス(1958年)[Decca/UCCD7002]
  • 2. エミール・ギレリス(1980年)[DG/4000362(輸) ]
  • 3. ルドルフ・ゼルキン(1962年)[Sony Classical/88691988302(輸) (11枚組)]
  • 4. ウラディーミル・アシュケナージ(1980年)[Decca Vurtuoso/4783349(輸) ]
  • 4. ワルター・ギーゼキング(1956年)[Istituto Discografic/IDIS6573(輸) ]
  • 6. クラウディオ・アラウ(1986年)[Decca Collectors/4783694(輸) (12枚組)]
  • 6. ヴィルヘルム・ケンプ(1965年)[DG Originals/447404 (輸) ]
  • (輸)=輸入盤
   
ヴィルヘルム・バックハウス Wilhelm BACKHAUS [1884-1969(ドイツ)]
「鍵盤の獅子王」の異名をとるバックハウス。ベートーヴェンの解釈・演奏に関して、他の追随を許さないスペシャリストです。現代の“洗練”された演奏とは違う、“素朴”で“骨太”な演奏が彼の特徴。そこにはバックハウス自身の人間的な温かさが溢れています。
サンソン・フランソワ Samson François [1924-1970(フランス)]
「質実剛健」「鋼鉄のタッチ」という言葉で評されてきたギレリスですが、晩年豊かなインスピレーションと即興性に溢れたフランソワのショパンは、そのどれもが歴史的名演といっても過言ではありません。テンポの急緩、ルバートを用いた揺れ、低音部の強調など、まさに自由奔放な演奏に知らず知らずのうちに惹きこまれていきます。
ルドルフ・ゼルキン Rudolf SERKIN [1903-1991(チェコ→アメリカ)]
前述の二人に比べ、ゼルキンが残したベートーヴェンのピアノ・ソナタの録音は決して多くありません。にもかかわらず、音楽に対するひたむきさを強く感じさせる彼の演奏は――特に「悲愴」「月光」「熱情」の3大ソナタや後期のソナタ群において――高い評価を得ています。

*『クラシックCDエッセンシャル・ガイド150』(学研パブリッシング刊)より

9月

時代を知るー② ジョン・ケージ〜アメリカ音楽

独特の音楽論や表現を開拓し、音楽だけではなく前衛芸術全体に影響を与えたアメリカの作曲家、ジョン・ケージ。彼は、来る9月5日に生誕100年を迎えます。
第2回目の『時代を知る』は、ジョン・ケージの生きた時代のアメリカ音楽について見てみましょう。この頃アメリカでは、生活を題材にする描写的音楽が盛んでした。以来、アメリカ作曲界には世界のあらゆる作風やジャンルが混在しています。
2012年1月号の『時代を知る- (1) ドビュッシー』の年表と併せて、フランスとアメリカの音楽の変化を比較してみることで、また新たな発見ができるはずです!


「年表」で時代を俯瞰した後に、気になる「キーワード(=様々な視点)」を調べてみましょう♪

【キーワード】
植民地/アメリカニズム/ブルース/ラグタイム/ジャズ/吹奏楽/カントリー・ミュージック/R&B/抽象表現主義/通俗楽派/実験音楽/ロック/ミニマリズム/フュージョン/ポップ・アート/ヒップホップ

【同時代にアメリカで活躍した音楽家】
スーザ/ジョプリン/ラフマニノフ/アイヴス/クライスラー/バルトーク/グレンジャー/ストラヴィンスキー/ヴァレーズ/グローフェ/ピストン/ガーシュウィン/コープランド/ロジャース/バーバー/バーンスタイン/デイヴィス/ライヒ/グラス/モンク

8月

ジャポニスム ドビュッシーが生きた時代

来る8月22日は、フランスを代表する作曲家・ドビュッシーの生誕150周年です。
彼が日本の美術品や工芸品を好んでいたことは有名です。自宅には浮世絵や漆塗りの盆などが飾られ、交響詩「海」(1905年)の初版には葛飾北斎の《神奈川沖浪裏》が表紙に使われたほどです。
これは、彼が特別だったということではなく、当時のフランス市民の流行だった“ジャポニスム”が影響しています。
なぜ、今から150年前のフランスで、“ジャポニスム”が流行していたのでしょうか?

●きっかけはパリ万博
世界の様々な物品が集結する「パリ万国博覧会」に日本が初出展したのは第2回パリ万博(1867年)。江戸幕府、薩摩藩、佐賀藩がそれぞれ出展し、日本の伝統工芸品、美術品を展示したそうです。当時の西洋にはない発想、美しさがフランス市民に受け、1878年の第3回パリ万博ではさらに人気を博し、浮世絵、漆塗り、着物、屏風、扇子、和傘…など、日本のあらゆる品が話題となりました。

●浮世絵がもたらした美術界への影響
単なる“ブーム”で終わらず、“イズム”として歴史に名を残したのが、美術界に多大な影響を及ぼした「浮世絵」でした。当時、肖像画が中心であった西洋美術の歴史は、カメラの発明によって新たな時代を迎えようとしていました。“ありのまま”を描いてきた画家たちに新たな発想を与えたのが、平面構成で空間を表現していた「浮世絵」でした。後期印象派の画家・ゴッホは、歌川広重などの浮世絵をいくつも模写し、その構図、色彩感覚、線描画法を身につけていったといわれています。マネ、ルノワール、ロートレック、モネ、ゴッホなど、西洋美術界を代表する画家たちが、“ジャポニスム”の影響を受け、新しい時代“印象派”を切り開いていき、それが音楽界へも波及していきました。

この夏、ドビュッシーの生誕150周年を記念して、音楽と美術をテーマにした展覧会が開催されます。“ジャポニスム”の展示コーナーも予定されています。日本の会場は、東京駅から徒歩5分の「ブリヂストン美術館」。遠方で来場が難しい方も、ホームページをのぞいてみてください♪ 自宅に居ながらにして、展覧会の雰囲気を味わえるかもしれません。(いも)

ドビュッシー 音楽と美術 —印象派と象徴派のあいだで

開催期間:2012年7月14日(土)〜10月14日(日)
会場:ブリヂストン美術館 東京都中央区京橋1-10-1

http://debussy.exhn.jp/outline.html

7月

日本の心

7月1日は「童謡の日」。1984年(昭和59年)、日本童謡協会により制定されました。なぜこの日…? 協会による「童謡の日宣言」をみてみると、雑誌『赤い鳥』が発刊された1918年(大正7年)7月1日を記念して制定した、とあります。『赤い鳥』は、児童文学者鈴木三重吉(明治15-昭和11)主宰の童謡・童話雑誌で、それまでの子どもの文化に大きな変化をもたらしました。

●子どもをとりまく歌の変遷
*明治以前…「わらべうた」は子どもたちの遊びや生活から生まれた(古い資料は平安時代にまでさかのぼるそうです)口承による歌です。「かごめかごめ」や「ずいずいずっころばし」などは、今でも歌いつがれていますね。

*明治から大正…「富国強兵」「文明開化」政策のもと、1872年(明治5年)に学制が発布され「唱歌」が教科のひとつになります。西洋音楽が次々と日本に紹介され、「蝶々」「蛍の光」など、外国曲に日本語の詩をつけた歌も数多く生まれました。1910年(明治43年)に小学校令が改正されると、文部省は日本人に作詞・作曲を依頼して『文部省唱歌』を作ります。「故郷」「春の小川」などの名曲も含まれましたが、歴史や修身などを内容とする、堅苦しい教訓的なものが大半でした。

●赤い鳥運動
*大正…そうした教育界に対する、「子どもの想像力や感性を育てる質の高い“童話”や“童謡”を創作したい」という鈴木三重吉の思いが、『赤い鳥』の創刊で実を結び、当時の日本を代表する作家や音楽家の参加を得て「赤い鳥運動」につながっていきます。1936年(昭和11年)に廃刊になるまでの約18年、新しい子ども文化の牽引役を担いながら“童謡・童話の黄金時代”を築きました。「七つの子」「赤いとりことり」「かなりや」など、今もなお親しまれている“童謡”のほとんどが、この時代に作られたのです。

歌は世につれ…。時代を経て子どもの歌も変化し続けています。時には、それぞれの歌の背景に思いを馳せながら口ずさんでみるのも楽しいかもしれません。本紙でも「日本の心」のコーナーで、さまざまな歌をご紹介していく予定です。ご期待ください。(く)

〈日本童謡協会のホームページ=http://www.douyou.jp/doyo/utage.html

*お詫びと訂正

「学研おんがく通信2012 年7月号」“日本の心” コーナーに誤りがありました。
正しくは下記のとおりです。
読者の皆様に深くお詫び申し上げますとともに、ここに謹んで訂正させていただきます。

× 誤「1910年(大正7年)」 → ○ 正「1918年(大正7年)」

6月

楽器の日 〜ピアノ〜

6月6日は楽器の日。1970年(昭和45年)に全国楽器協会が制定しました。古くから伝えられてきた「芸事の稽古はじめは、6歳の6月6日にする」という習わしに由来しています。…というわけで、この楽器の日にちなんで、ピアノの歴史について調べてみました。そのルーツは15世紀にまでさかのぼります。

●チェンバロの誕生
現在のピアノのように、弦を叩くのではなく、ひっかいて音を出す「チェンバロ」が誕生したのは1650年頃でした。音の強弱はつけられませんが、使用する弦の数や組み合わせによって、音色を変化させることができます。J.S.バッハやクープランが活躍した 時代の楽器です。フランス語では「クラヴサン」、英語では「ハープシコード」と呼ばれます。

●クラヴィコード
18世紀頃に誕生した「クラヴィコード」は、弦を打つ位置によって音の高さが変わります。音量はとても小さいですが、強弱や表情がつけられ、ヴィブラートも可能です。J.S.バッハの家族やヘンデルをはじめ、18世紀の音楽家の誰もが愛した鍵盤楽器です。

●フォルテピアノ
フィレンツェの楽器製作者バルトロメオ・クリストフォリが、1700年以前に「フォルテピアノ」を開発しました。鍵盤の数は5オクターブ程度ですが、現在のピアノのように、弦をハンマーで叩いて音を出します。しかしハンマーが小さいのでタッチが軽く、まろやかな音色がします。古典派音楽の初期時代に、ベートーヴェンらの活躍とともに飛躍的に発展し、皆さんご存じのピアノの名曲の数々が生まれました。

●モダンピアノ(現在のピアノ)
「フォルテピアノ」が時代を経てたどりついた楽器が、「モダンピアノ」です。鍵盤の数は88鍵が標準になり、弦は鋼線で、 非常に強くなった張力を支えるフレームは木製から金属に、弦を叩くハンマーも大きくなりました。強弱の幅はとても広くなり、タッチによってさまざまな表現が可能です。また各ピアノ製作業者の研究により、数々の名器が誕生しています。

クラヴィコードから、現在のモダンピアノまで4種類の鍵盤楽器をご紹介しましたが、この他にも“ピアノ”が誕生するまでに、さまざまな鍵盤楽器が開発されました。そして現在もピアノの製作業者の研究により、日々改良が重ねられています。

ちなみに、日本に西洋の音楽が入ってきたのは、江戸時代後期(ベートーヴェン晩年の頃)のことで、鎖国のなか、唯一開港していた長崎から伝わりました。そして、1823年にピアノが入ってきたところから日本のピアノの歴史がはじまりました。

〈参考文献〉「ピアノの歴史」(河出書房新書)「ピアノの名器と名曲」(ナツメ社)ほか

【キーワード】ピアノの歴史を調べるにあたり、ヒントになるキーワードを並べてみました。 この他にもたくさんあります!
《鍵盤楽器》 クラヴィコード/チェンバロ/ヴァージナル/スピネット/タンゲンテンフリューゲル/フォルテピアノ/モダンピアノ…
《ピアノ製作》 クリストフォリ/ジルバーマン/シュトライヒャー一族/グラーフ/ブロードウッド/クレメンティ/ベヒシュタイン…
《音楽家》 J.S. バッハ/J.S. バッハの家族/クープラン/へンデル/モーツァルト/べートーヴェン/シューベルト/メンデルスゾーン/シューマン夫妻/ブラームス/ハイドン/ショパン/リスト/ドビュッシー/ラヴェル… などなど…

楽器を知ろう!
楽器のおはなし

5月

ピアノを弾くときの手のかたち

ピアノを弾くときの手は、どのような形をしていますか?

“たまごを軽く握った形” で弾くように指導された人が多いかもしれませんね。
ところが近年、“たまごの形” とは違う表現を耳にするようになりました。どういうことなのでしょうか?

「ハイフィンガー奏法」「重力奏法」という2つの奏法がこの話のポイントとなります。

ハイフィンガー奏法: 指を引き上げ、垂直に下ろす奏法。指を立てて演奏するもの。“たまごの形”と呼ばれるのはこの奏法。
重力奏法: 身体の重みを利用した奏法。指の腹で演奏することが多くみられる。

指の力で演奏する「ハイフィンガー奏法」は、まだ鍵盤が軽かった19世紀のヨーロッパで主流の奏法でした。その後、ピアノが改良されて鍵盤が重くなり、身体の重みを利用する「重力奏法」が注目されましたが、日本には明治時代に「ハイフィンガー奏法」だけが導入されて、定着してしまったようです。ピアニストの中村紘子さんがジュリアード音楽院に留学した際、当時日本で主流だった「ハイフィンガー奏法」が通用せず、奏法を一からやり直されたというエピソードは有名です。どちらの奏法がよいのかということがよく問題に挙がりますが、近年では、曲によってこの2つの奏法を“弾きわける”という考えが主流になってきているようです。輪郭のはっきりした硬質な音は「ハイフィンガー奏法」。伸びやかで深みのあるまろやかな音は「重力奏法」。ピアニストは、この2つの奏法を使いわけて、さまざまな音色を出し、より深みのある演奏に仕上げていくのですね。
それでは、指の形はどのようにしたらよいのでしょうか?

これまで日本で馴染みのあった“たまごの形”では、指先が中に入り込んでしまい、「重力奏法」(指の腹で弾くこと)が難しくなってきます。どちらの奏法においても必要となるポイントは、指の付け根を一番高くし、手首を下げ、各関節が凹まないようにアーチ状の形をつくるということ。これらに注意すれば、他の部分に力が入って手を傷めることはありません。これらの条件をクリアした表現として、最近では、“ボールを持った形”や“風船を持った形”、“マウスを握った形”などといった表現が、登場してきています。

ご自身の手を見てみましょう。大きい?小さい?指が長い?短い?4の指が2の指よりも長い?それともその逆?…。周りの人と比べてみると、いろいろな特徴に気づかされます。ピアノを弾くときの手の形や奏法は、体格や手の特徴に合わせて十人十色。それぞれの手に合ったオリジナルの奏法を探して、ピアノ演奏を楽しみましょう。(いも)

〈参考文献〉「ピアノを弾く身体」(春秋社)「チャイコフスキー・コンクール」(中央公論社)ほか

4月

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2012「熱狂の日」音楽祭へ行こう!!

「ラ・フォル・ジュルネ」を知っていますか?フランスのナント市で、年に1度開催されるフランス最大級のクラシック音楽祭です。ナント市での成功を受けて、現在ではポルトガルやスペイン、日本など世界各地で開催されています。毎年テーマが指定され、会場となる施設内の複数のホールで、朝から晩まで、短時間のコンサートが一斉に開催されます。世界中から一流の演奏家を迎えて行われるコンサートは、コアな音楽ファンからクラシック初心者までが楽しめる充実した内容となっています。日本では「熱狂の日」音楽祭と呼ばれ、毎年大変な賑わいです。

さて、全貌を徐々に明かされる「熱狂の日」音楽祭ですが、イメージ画はごらんになりましたか?リムスキー= コルサコフ、チャイコフスキー、ラフマニノフ、ストラヴィンスキー、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチの6人が、思い思いの表情で描かれています。ホームページの情報によると、旅を終えて駅のホームに降りたち、自作品が演奏される東京の演奏会へ向かう様子だそうです。そう! 今年のテーマは、ロシア音楽! 題して、「サクル・リュス」=「ロシアの祭典」です。これは、三大バレエ音楽の作曲でも有名なストラヴィンスキーの「春の祭典(サクル・デュ・プランタン)」にちなんでつけられました。ストラヴィンスキーをはじめ、ロシアの音楽は力強く、壮大さの中に叙情が溢れる、とても表情豊かな作品が多いですよね。19世紀から現代までの激動のロシアで生み出された作品が次々と登場します!

ところで、イメージ画の中の汽車って何でしょう…?これはシベリア横断鉄道が登場する有名な小説『ドクトル・ジバゴ』にちなんだ絵で、ロシアの雄大な大地、そしてロシアの人々の開拓心を象徴しています。日本の会場となる東京国際フォーラムも登場していますね。この場所で前代未聞のロシア音楽の祭典が繰り広げられることを暗示しているようです。

日本での開催は、今年でナント!8回目です。創設者でもあり芸術監督のルネ・マルタン氏のインタビューによると、日本では『八』がおめでたい数字だと聞き、日本での開催について大変はりきっているそうです。『八』は末広がり、とても縁起の良い数字ですものね。今年の「熱狂の日」も盛り上がること間違いなし! みなさま、会場へ足を運んでみてはいかがでしょうか? (の)

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン開催地域

東京・金沢・新潟・大津・鳥栖

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」2012公式サイト

3月

旋律迷宮へようこそ~アナリーゼの愉しみ~

突然ですが、ミステリーはお好きですか?よく考えると音楽、特に楽譜って謎に満ちていると思いませんか?なぜって、たった5本の線(=五線)とオタマジャクシみたいなグリグリ(=音符)や、くにゃくにゃ(=音部記号)だけで、瞬間瞬間に消えて行く音楽を表現するんですよ!? なんて摩訶不思議。誰が思いついたのかしらん。謎…。と、このオハナシはまた別の機会にさせていただくこととして。ミステリーと言えば探偵。楽譜上で探偵気分を味わえるのがアナリーゼ…!?というわけで、今回はアナリーゼのオハナシ。

Analyze=分析する、という英単語のとおり“アナリーゼ”とはすなわち“楽曲分析”。曲にひそむあらゆる証拠=要素を集め楽曲を読み解く作業、なのですけれども、それってまるで、楽譜の中を虫メガネを片手に歩き回る探偵そのもの…?ですが、なんだか“アナリーゼ”って敷居が高く思えてなりません。確かに“分析”ってコムズカシイ感じ。でも、にわか探偵(2時間のサスペンスドラマでよくあるパターン…)気分であっさり取り組むだけでも、演奏はもちろん鑑賞もまた、全然違った趣や理解が得られるのでは?
例えば、今年がメモリアル・イヤーのドビュッシーのピアノ組曲《版画》「雨の庭」。冒頭から両手で奏でる、まるで雨だれを思わせる旋律が〈テーマ1〉。フランスの童謡「ねんねよ坊や」がモチーフとも言われています。さあっ、と降る雨の中のぽつんぽつんとしたメロディは、次のテーマを隠しつつもだんだん勢いを増す雨に呑み込まれて…わぁ!凄い!雷!?と思うようなクライマックスの直後に聴こえる〈テーマ2〉…。このメロディ、これまたフランスの雨の童謡“Nous n'irons plus au bois”(「(雨だから)もう森へは行かない」)。童謡と知ったとたん、弱まる雨煙の中に、無邪気な唄声が聴こえます…ん!?あれ!?〈テーマ2〉って〈テーマ1〉から派生している筈で、でも〈テーマ2〉のほうに基になるメロディがあって…。ということは、出てきた順に1とか2って言ってるけど、ホントはドビュッシーは〈テーマ2〉を使いたくて〈テーマ1〉を思いついたのかも!?あああ、ニワトリが先か卵が先か…。知りたいぃぃぃ!!
娘のエンマ(=シュウシュウ)を溺愛していたと言うドビュッシー。雨の音楽に雨の童謡を紛れ込ませるなんて素敵ですね。そしてコーダのステキなアルペッジョは「虹が出たぁ!」

こうして音の一つ一つ、パッセージの一つ一つに想像の翼を広げ、作曲家の想いや曲の背景に迫るのは、難しそうに見えて実はシンプルでとても知的な遊びなのではないでしょうか。(か)

2月

ひとりで譜読みができますか?

音楽の基礎とも言うべき“読譜力”。店頭には読譜力を養うための、さまざまな教本やドリル、グッズなどが並び、先生方もレッスンの中で日々工夫されていることと思います。今回は、“譜読みをする”とはどういうことなのか、改めて考えてみたいと思います。

楽譜って?
まず、楽譜の構造を見てみましょう(①)。「音の高さ(おんぷ)」と「音の長さ(リズム)」の2つの要素が絡み合っていることがわかります。実際は、そこに指番号、強弱記号や速度記号なども加わってきます。 “譜読み”と一言で言っても、私たちはたくさんの要素を同時に読みとっているのです。

 

譜読みをするって?
次に、ピアノを弾くときのサイクルを見てみましょう(②)。「おんぷ」と「リズム」を同時に読みとり、それを手に伝達し、けんばんに触れて音にする・・・という作業を瞬時に繰り返す―。
う〜ん、とても大変な作業をしているのですね。

1、楽譜の構造   ピアノを弾くときのサイクル

ある脳科学の専門家が「習い事はピアノだけで良い」と発言し話題になりましたが、確かにここまで頭を使う習い事は他にないかもしれません。

読譜力を養うためには?
では、このような作業を子どもにわかりやすく指導するにはどのようにしたら良いのでしょうか? 子どもは一度にいろいろなことを考えることが不得意です。まずは「おんぷ」「リズム」「けんばん」を分けて学習し、それぞれの基礎を確実に身につけていきましょう。“体得”できるまで繰り返し学習することが大切です。 子どもが飽きることなく継続していけるように、ゲームを取り入れたり、歌を歌うなどして、常に楽しいレッスンを心がけましょう。

1月

時代を知る!(1) ドビュッシー

2012年のクラシック音楽界の話題の中心は、なんと言っても生誕150年を迎えるドビュッシーでしょう。ロマン派後期から近代という激動の時代を牽引したドビュッシー。メモリアル・イヤーをきっかけに、もう一度彼が生きた時代を眺めてみましょう。

今回はコラムではなく、「年表」で時代を俯瞰した後に、気になる「キーワード(=様々な視点)」を調べる、という提案型のコーナーにしてみました。自分で「調べて」「まとめる」という作業が一番身につき、おもしろい…ということは読者の皆さまも体験済みですよね。今後もタイミングをみてこのシリーズを掲載していく予定です。ぜひぜひご活用いただき、編集部あてにご感想などをお寄せください。

【キーワード】
管弦楽法/機能和声/旋法/全音音階/5音音階/ガムラン/ワグネリアン/ムソルグスキー/ロシア5人組/パリ万国博覧会/ナショナリズム/国民音楽協会/独立音楽協会/写実主義/自然主義/印象主義/象徴主義/バルビゾン派/ジャポニスム
【同時代を生きたフランスの人々】
《作曲家》フランク/サン=サーンス/フォーレ/シャブリエ/サティ/デュカス/ラヴェル
《 詩 人 》 ヴェルレーヌ/マラルメ/ランボー/ルイス
《 画 家 》モネ/ドガ/ルノワール/セザンヌ/ピサロ/コロー/ゴッホ/ゴーギャン

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