お江戸を拝見

紙の博物館

 JR王子駅近くの飛鳥山は、江戸時代から桜の花見でにぎわった場所。この飛鳥山公園内にある「紙の博物館」は、昭和25年から続く紙専門の博物館で(平成10年に、現在地に移転オープン)、東洋・西洋の製紙の歴史や、現在の紙作りの技術を見ることができる。このページでは、江戸時代の紙作りについて、ちょっと拝見!
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●浅草紙
 落とし紙(トイレットペーパー)などに使われていた浅草紙は、江戸時代の庶民に親しまれていた安価な漉き返し紙。かえってそのためか、現存するものはとても珍しい。製造方法は、墨が付いた古紙を水に浸し、叩いてくだき、漉く程度の、非常に簡単なもの。良く見ると文字が書かれたままの紙片や、人の髪の毛なども混じっている。(右の写真は透過光で撮影したもの。紙全体にムラが多いことが分かる。)
※浅草紙は、常設展示はされていません。


●和紙の原料

原料の白皮(左から楮、三椏、雁皮)
 和紙は、現在の紙(西洋紙)のようにパルプ(木材を砕いたチップを薬品などで処理したもの)で作るのではなく、楮(コウゾ)、三椏(ミツマタ)、雁皮(ガンピ)の枝の皮から、外側の黒皮をはぎ取った、白皮が原料になっている。



楮(コウゾ)
クワ科の落葉低木。和紙の主要な原料として栽培される。

三椏(ミツマタ)
ジンチョウゲ科の落葉低木。中国が原産。枝が3本に分かれるのが名前の由来。

雁皮(ガンピ)
ジンチョウゲ科の落葉低木。栽培が難しく、雁皮紙は品質に優れているが、生産量はわずか。



トロロアオイの根

トロロアオイ
 トロロアオイはアオイ科の一年草。根を叩いて水に漬けると透明な粘液が得られ、「粘剤(ねり)」として和紙作りに使われる。


●人形で見る、和紙作り
 江戸時代の紙作りは、1798(寛政10)年に石見国(島根県)の国東治兵衛が記した製紙の技術書『紙漉重宝記』に詳しく記録されている。その挿絵21点を紙人形にした『紙漉重宝記人形』(きふじ会制作 1970年頃)で、当時の紙作りの様子を見ることができる。(写真はその一部)


楮の枝は、蒸したあと皮をはぎ(写真・左)一度干す。さらに水に漬けたあと、黒皮を削り取る(写真・右)。


白皮をよく洗ってから煮て(写真・左)、さらに洗う。板の上で白皮を叩き、繊維をやわらかくしてバラバラにする(写真・右)。


叩いた白皮の繊維を漉き船(大きな水槽)の水の中に入れ、さらにトロロアオイの根から取った粘剤(ねり)をよくまぜる(写真・左)。漉き桁で紙を漉き(写真・中央)、干し板で干す(写真・右)。

取材協力 = 財団法人 紙の博物館