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小学生白書Web版 2012年7月調査

第2章 子どもの教育に対する家庭の方針 -理科的な活動に対する保護者の構えに着目して-

渡辺恵(明治学院大学非常勤講師)

1.家庭におけるしつけ・教育の方針
(2)学業に対する方針

子どもの学業について、保護者はどのような構えでいるのか。この点を、子どもの勉強に対する関与と進学に対する期待に分けて見ていこう。

①勉強への積極的関与は、子どもの出生順位に左右される?

子どもの学業において心がけていることとして、「宿題などの勉強を見てあげるようにしている」ことがどの程度あてはまるかを尋ねた。その結果は図2-2に示すとおりである。

図2-2.「宿題などの勉強を見てあげるようにしている」割合
(全体、出生順位・性別、母親の就業形態別及び母親の最終学歴別 単位:%)

*「とてもあてはまる」と「まああてはまる」の合計の割合

表

全体では、約3分の2程度の家庭が「勉強を見てあげるようにしている」と回答している。子どもの勉強への親の積極的関与がある程度なされていることが窺える。その傾向は、性別にかかわらず、子どもが第一子の場合にはさらに強まるようである。先に検討した日常生活に関わるしつけと同様に、親は第一子に対しては、注意深い対応で子どもの成長を促す構えでいると言えよう。

では、どのような家庭において、子どもの勉強に積極的な関わりを持とうとしているのだろうか。ひとつは、母親が「正規雇用」の家庭である。母親の就業形態別に見ると、母親が「正規雇用」である家庭では、「勉強を見てあげるようにしている」割合は74.7%であり、「無職」では66.7%、「非正規雇用」では60.4%である。母親が「正規雇用」の場合、ほとんどのケースが共働き家庭であり、子どもと過ごす時間は少ないと思われる。そうしたなかで、保護者自らが子どもの勉強に関わろうとする傾向が強いのは、子どもの学力を伸ばすことに強く気にかけていることの表れとして見て取れよう。

もうひとつは、母親が「大学・大学院卒」の家庭である。母親の最終学歴ごとに見ると、「勉強を見てあげるようにしている」割合は、母親が「大学・大学院卒」の家庭では約7割であり、他の家庭に比べ、保護者が子どもの勉強に関心もって取り組んでいる姿勢が見受けられる。母親の教育経験から、子どものしつけや教育のなかでも学業面をより重視する方針が選択されるのであろう。

ちなみに、母親が「専門学校・各種学校卒」の家庭では「勉強を見てあげるようにしている」割合が56.2%と、他の家庭に比べ最も低い割合であった。先の日常生活におけるしつけに対する方針の結果を踏まえれば、母親が「専門学校・各種学校卒」である家庭では、保護者は、子どもの学業よりも、生活能力を身につけさせることにより関心をもって取り組んでいると推察される。

②保護者の教育経験が子どもの学歴獲得に対する構えを決定づける?

学業達成に対する保護者の構えをみておこう。図2-3は、小学6年生の子どもをどの段階まで進学させたいかを尋ねた質問の結果である。

図2-3.小学6年生の子どもに期待する進学段階(全体、出生順位・性別 単位:%)

表

全体では、「大学まで」の進学を期待する家庭は7割弱であり、「大学院まで」を含めると7割を越える。多くの家庭が、子どもに大学以上の教育を受けさせたいと考えているのがわかる。ただ、子どもの性別・出生順位ごとにみていくと、子どもの性別によって、進学期待が異なっているのがわかる。大学以上の進学を期待する割合(「大学まで」と「大学院まで」と回答した合計)は、男子の「第一子」では78.7%、「第二子以降」では78.5%である。女子の「第一子」では67.4%であり、「第二子以降」では65.8%である。子どもが男子である場合に、保護者はより高い学業達成を望むことが窺える。

なお、子どもの出生順位による違いは、男子ではほとんど見て取れないが、女子では、その子が「第二子以降」の場合、「第一子」に比べ「高校まで」の進学を期待する家庭が多くなっている。女子では、第一子に対しては高校以上の教育も受けさせたいと考える傾向が強いようである。

性別以外にも、子どもの学業達成に対する保護者の構えは、保護者自身の教育経験によっても左右されると考えられる。このことを検討するために、保護者が4年制以上の大学または大学院での教育経験を持つかどうかに着目して、みていこう。図2-4は、保護者の4年制大学以上の教育経験(最終学歴が「大学卒」または「大学院卒」であること)の有無別に「大学まで」と「大学院まで」の進学期待の割合を示したものである。

図2-4.「保護者の大学以上の教育経験の有無」別、世帯年収と「保護者の大学以上の教育経験の有無」別にみた、小学6年生の子どもに対する「大学」・「大学院」進学への期待(単位:%)

表

両親共が大学以上の教育経験を持っている家庭では、子どもに大学以上の進学を期待する割合(「大学まで」と「大学院まで」の合計)は95.8%にも上り、自分と同じように大学以上の教育を子どもに経験させたいという構えが見て取れる。両親のうち、どちらか一方の親が大学以上の教育経験を持っている家庭では、大学以上の進学を期待する割合は83.0%であり、やはり大学以上の教育を経験させようとする思いが強い。それに対して、大学以上の教育経験を持っていない両親の場合、子どもに大学以上の進学を期待する割合は58.4%まで下がる。子どもに大学以上の進学を期待する構えは、保護者自身の大学教育経験に起因すると考えられる。

付言すれば、世帯収入を統制すると、保護者の大学以上の教育経験の有無による影響がより明確に表れる。各母数が小さいため数値は参考程度となるが、世帯収入が低い場合でも、保護者が大学以上の教育経験を有している家庭では、子どもに大学以上の進学を期待する割合が高いままであることがわかる。世帯収入が800万円以上になってようやく保護者の大学以上の教育経験の有無による差が小さくなる。したがって、親が大学教育以上の経験を有する家庭では、子どもにも高学歴を獲得させることを目指す教育方針がとられていると言えよう。

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