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ホームページリニューアル記念 その1 銀ネズミの騎士団結成!?

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「ネズミの騎士団?」
 なるほどこの二匹のまとっている物は、よく見れば騎士団の格好に似てないこともない。
「銀ネズミ騎士団であります」
 耳にブチのある方のネズミが訂正した。
「人間のような大きな生き物は、自分たちだけが街の住人だと思っておるようだが、街はいろいろな生き物が暮らす場所なのだ。人間の騎士団はいくつもあって、それぞれが街を守るために日夜努力しておるが、それでも目の届かぬ場所がある。そうした場所の平和を守るために結成されたのが、銀ネズミ騎士団なのだ」
 黒いネズミが鼻をヒクヒクさせながら説明する。
「我が輩は、団長代理を務めるデュドネ・ド・ゴゾンと申す者。こちらは部下のコニャーズである」
「はっ! コニャーズであります。以後よろしくお願いいたします」
 耳にブチのあるコニャーズが敬礼した。
「へえ、そんな騎士団があったなんて初めて聞いたよ。……猫騎士の知り合いはいるけど」
 と、トリシア。
「我が騎士団が結成されたのは、今から十二日前、倉庫街の片隅のことでありました」
 コニャーズが誇らしげに説明する。
「以来、下水道の警備、家々の戸締まりの監視など、輝かしい戦果を上げ、今日に至っているのです」
「じゅ、十二日前?」
 道理で、聞いたことがないはずである。
「結成当時はたった二匹で始めた騎士団だが、今や団員数は四百六十八匹。もはや私一人では治めることは難しい」
 デュドネはため息をついた。
「み、短い間にずいぶん増えたのね?」
「ネズミですので」
 コニャーズが胸を張る。
「それでだ、トリシア殿」
 デュドネが咳払いして続けた。
「体の大きな生き物で、我々の言葉が分かる貴殿に是非とも団長になっていただきたい」
「へえ。……大きくて偉そうに見えて、ネズミの言葉が分かれば誰でもいいんだ?」
 皮肉を込めてトリシアはたずねる。
「その通り!」
 デュドネは言い切った。
「お断り。わたし、これでも忙しいの」
 トリシアはそっぽを向く。
「一日銀貨一枚では?」
 デュドネが合図すると、壁に開いた穴から銀貨を担いだ団員たちがやってきて、トリシアの足下に置いた。
「……団長っていうのも、悪くないわね」
 ピカピカの銀貨をつまみ上げたトリシアはニッと笑った。