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ショーン、人生最大の危機!?

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ショーン、人生最大の危機!?

よく晴れた春の日。午後のサクノス邸。
「この僕が、騎士団に協力?」
 ショーン・サクノス・ド・レイバーンは、白天馬騎士団の副団長シャーミアンの訪問を受けていた。
「ああ」
 ソファーに座り、立てた剣の柄に手を置いたシャーミアンは真剣な顔で頷き、説明する。
「ある裕福な商人の家に、子供を誘拐するという予告状が来た。できれば、誘拐の現場で犯人を捕らえたいのだが、人質を危険にさらすことは避けたい。そこで、君に子供に変装してもらって、オトリになって欲しいのだ」
「……このこと、兄上たちには?」
 ショーンは用心深く尋ねた。
 ショーンの兄、プリアモンド、リュシアン、エティエンヌの三人は、普段はとても優秀な騎士なのだが、末弟のこととなると、とかく過剰に反応するのだ。
「無論、秘密だ。あいつらは君に過保護なところがある。連中が反対すると、話がややこしくなるからな」
 三兄弟の話が出ると、シャーミアンの頬がピクピクと震える。普段、あの三人に一番迷惑をかけられているのが、他ならぬ副団長のシャーミアンだからだ。
「具体的には、何をすればいい?」
 と、ショーン。
「商人の子供の代わりに学校に行き、普通に生活してくれ。犯人たちが君に接触したこところで、捕らえるという見事な計画だ」
 シャーミアンの瞳がキラリと光った。
「うむむ、オトリか……」
 かなり危なそうな任務なので、ショーンはためらう。
「安心してくれ。この私がメイドに変装して常に君のそばにいる」
 シャーミアンは安心させるようにショーンの肩に手を置く。
「この作戦が成功すれば、君が騎士団に入れる日も近づく。約束しよう」
「騎士団に!? 任せてくれ!……げほ、ごほ!」
 ショーンはどんっと自分の胸をこぶしで叩き、思わずむせた。