WEB限定 書き下ろし小説

見習い騎士の悩み

4

「それじゃ、僕の出番〜」
エティエンヌが、レンの肩に手を置いてニ〜ッと笑った。
「ええっと……エティエンヌって、武器を使って戦ってる印象がないんだけど?」
レンは首をかしげる。
「まあね〜、ま、みんなには秘密だけど」
声をひそめたエティエンヌは、両手をさっと振った。
「僕はこうやって、左右の袖の中に短剣を隠してるんだ」
「なんで?」
「相手を油断させるためかなあ。ともかく、短剣なら軽いかレンでも使えるよ。やってみる?」
エティエンヌは片方の短剣をレンに手渡した。
「こ、こう?」
レンはそれを構えて振ってみる。
「ちょっと違うかな? こんな感じで」
エティエンヌは短剣を右手から左手、左手から右手へと移動させながらクルクルと回して見せた。
「こ、こうかな?」
「ううん、ここをこう回すんだよ」
レンは自分では器用な方だと思っていたが、エティエンヌには手も足も出ない感じだ。

そのうち。
「たたたた〜っ!」
投げ上げた短剣の柄の方を握ろうとして、間違って刃の方に指先が触れた。
短剣が床に落ち、レンは指を反対の手で握る。
「あ〜、ちょっと指切ったみたいだね。トリシア、呼ぼうか?」
レンの傷の具合を見て、エティエンヌはたずねた。
「呼ばないよ、恥ずかしい! 練習してて怪我したなんて言えないって!」
と、首を振るレン。
「となると、あのアンガラドに看てもらうしかないぞ」

プリアモンドが顔を強ばらせる。勇敢で恐れ知らずのプリアモンドも、自分をしょっちゅう実験台にしようとする騎士団医務室の医師、アンガラドだけは大の苦手なのだ。
「……それも嫌だ。さっき、なんか怪しいクスリ作ってたし」
プリアモンドがアンガラドにだまされ、リスやモグラに変えられるところを何度も見ているレンの顔は青くなる。

と、そこに。