WEB限定 書き下ろし小説

出逢い~星見の塔誕生

後編

「……この話になったら、急に目が輝き出したな」
「聞かせろよ!」
「別に、普通の人……」
 と言いかけて、アンリは考え直す。
「……じゃないな。ちょっと変わってる」
「変わってる?」
「本当は誰よりも思いやりがあるくせに、普段はそんなそぶりも見せない。誰よりも辛い思いをしてきたくせに、悲しい表情は人前で決して見せない。ものすごいさびしがり屋のくせに、孤独でいることが好きな顔をする。すごい意地っ張り」
 苦笑したアンリは、レンのほうを見た。
「ほら、顔」
「え?」
「こっち向いて」
 アンリはレンの顔を自分の方に向かせると、その頬に手を当てる。
「わっ! よせよ!」
 逃げようとするレンの頬を温かな緑の光がおおうと、殴られたところの傷が一瞬ですっと消えた。
「……治った」
 信じられないといった顔のレン。
「そりゃあ、治癒の魔法だからね」
「……なあ、魔法って、誰でも覚えられるのか? 才能とか、いるのか?」
 レンは頬をさすりながらたずねる。
「魔法は、僕らのまわりにあるさまざまなもの、太陽の光や風、水、大地、命、あらゆるものから力を借り、意志の力で紡ぐものだ。必要なものはただひとつ。強い意志だけさ」
「強い……意志……」
 レンはつぶやくと、何かを決心したようにアンリを見上げた。
「俺さ、あんたの弟子になりたいんだけど……やっぱ、ダメか?」