WEB限定 書き下ろし小説

フローラ、七つの海へ!

「……ええっと、後ろに進むのって、これでいいのかな?」
 オーウェンは操縦席のレバーをいろいろと動かしてみる。 
「ちょっと! 操縦の仕方、ちゃんと覚えてないの!?」
 フローラの顔から血の気が引いた。
「実際にこの七号に乗るのは、今日が始めて」
「そういうことは早く言って! わたしが乗り込む前に!」
「止める前に勝手に乗ったの、君だろ?」
「言い訳しないの! なんでもいいから逃げて!」
 海ヘビはすぐそばまで迫っている。
「そうだね。まず船からあいつを引き離さないと」
 オーウェンは潜水艇の向きを変え、速度を上げた。
「追ってくるわよ!」
 フローラは後ろの窓から海ヘビを見る。
「光を浴びせられて怒ってるんだ」
「落ち着いてる場合!?」
「あわててもしょうがないだろ?」
 オーウェンは肩をすくめると、潜水艇を海底の方に向かわせた。
「も、潜るの?」
 フローラの顔がこわばる。
「あいつを振り切るには、そうするしかない」
「す、水圧でつぶれないでしょうね?」
「どうかな?」
「……あなた、このわたしをからかっている?」
「秘密」
 オーウェンは思わず笑いそうになるのをこらえた。
「……覚えてなさい、あとでひどいから」