WEB限定 書き下ろし小説

名コンビ誕生? へんてこ貴族セドリック&ドラゴン少年ライム♪

5

「さて、次は東街区に行ってみよう! 東街区はアムリオンの商業中心と呼ばれている! 僕も足しげく通うお店がた〜くさん並んでいるのだよ!」
 広場を離れたセドリックの足は東へと向かっていた。
 南街区と比べると、かなり大きく、きれいな家が並んでいる。家々の多くは吊り看板を下げていて、何を売っている店なのか、一目で分かるようになっている。道の石畳も南街区と違ってデコボコしていない。南街区では石畳が敷いてあるのは大通りだけで、他は土をならしただけの道なのだが。
「あそこに見えるのが、有名なマイルズ商会。僕が行くたびに誉めてくれる、と〜ってもいい店なのだよ」
 一軒の商店を指さすセドリック。この街に住んでいる物ならみんな知っているが、マイルズ商会が扱う商品のほとんどが、インチキな上に値段の高い怪しいもの。買いにくるのは、たいていがお金持ちの変人ばかりだ。
 と、たまたまそのマイルズ商会の方向から、二人組の女の子がこちらに向かってやってくるのが見えた。
 女の子のひとりは、セドリックの姿に気がつくと、クルリと背を向けて引き返そうとする。
「待〜ち〜た〜ま〜え〜!」
 セドリックは駆けていって、女の子の腕を握る。
「ええい! せっかく気がつかない振りして逃げようとしたのに!」
 その女の子ーーベルーーは、セドリックの胸にヒジ打ちを食らわせた。
「ははははっ! 気がつかない振りだなんて! この世界に、僕の神々しさに気がつかない人間などいるはずもないだろう?」
 胸を押さえてうめきながら笑うという、器用な真似をセドリックはして見せた。
「確かに……どんなに……嫌でも……気がついてしまう……それが……セドリック」
 ベルの隣でうなずいたのはもちろんアーエスだ。
「いやいや、照れるな〜、そこまで誉められると。確かに僕はそういう存在なのだが」
 ヒジ打ちの痛みから立ち直ったセドリックは、銀貨を二、三枚取り出してアーエスに渡した。
「今のがどうして誉めたことになるのよ?」
 そんなセドリックに、ベルは白い目を向ける。
「紹介しよう、「星見の塔」の同級生で………………」
 セドリックはライムにベルを紹介しようとして、ふと、眉をひそめた。
「何よ、その間は?」
 不振そうな表情を浮かべるベル。
「……まさか、サクノス家のバカ兄弟だけじゃなく、あんたまで、あたしの名前を?」
「いや、待て。今、思い出すから」
 セドリックは指をこめかみに当てる。
「……………………そうだ、エカチェリーナ! 当たりだろう!?」
「ぜんぜん違〜う! 間違えるにも限度ってものがあるわよ!」
 ベルは思わずセドリックの胸ぐらをつかんでいた。