WEB限定 書き下ろし小説

セドリック&ライムの偉大(?)で華麗(??)な冒険!

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「おおっ! これはお買い得だ!」
 村に入ったセドリックが、まず始めたことは買い物だった。
「この木彫りのペンダントは、王都の娘さんたちにも人気ですよ」
 村人の女性が、フクロウの彫刻のペンダントをセドリックの前に並べてみせる。
「そうか! では、ママの分とトリシア嬢の分、それにアムレディア王女の分に、セルマさんの分にクラスの女の子たちの分、ついでに非常に気が進まないがフィリイとフロラインとアーリンの分でーー」
 指折り数えるセドリック。
「50個ほどもらおうか?」
「街中の女性に配る気ですか?」
 白い目で見るライム。
「我が従者よ! いいところに気がついたな! 男の子たちの分も買わないと! 村人よ、あと30個追加だ!」
「お兄さん、太っ腹ですねえ。きっとモテモテなんでしょう」
 村人は大喜びだ。
「いやあ、それほどでもあるが」
 セドリックは胸を張る。
「……はあ」
 ライムは金貨を数えて村人に渡した。
「うちの店にも寄っておくれよ!」
「若様、こっちにも!」
「騎士様!」
 この村は王都に近いせいか、どの住人も商売がうまかった。
 たちまち、セドリックは、というか、その従者のライムは山のような荷物を抱えることになった。

 村を出たセドリックの一行は、森にさしかかろうとしていた。
森を抜け、分かれ道で街道を南西にまっすぐ進めばアムリオン第二の都市エドラル。
南東に進めばファヴローウェインの森である。
「では、そろそろ二度目の昼食にしよう」
森が少し開けた場所に出たところで、セドリックは馬を止めた。
「さっきの村であれだけ食べたくせに?」
呆れるライム。
セドリックは村でただ一件の宿屋で、村人全員を招いて大宴会を開いていた。セドリックが使ったお金で、村はまるで祭が来たみたいな騒ぎになったのだ。
「育ち盛りなのだ。一日六回食事をとるのが僕の習慣だよ? 困ったなあ、従者のくせに覚えていないなんて」
セドリックはとがめるような目をライムに向けた。
「知りませんよ、そんなこと」
「で、食料は?」
「ありません」
「ないのか? まったく?」
「少なくとも、僕は持ってませんよ」
「本来なら、従者が食料を用意すべきであろう」
「そもそも、従者になることに同意した覚えすらないんですけど」
「本来なら、従者が食料を用意すべきであろう」
「だから、僕はーー」
「本来なら、従者が食料を用意すべきーー」
「分かりました! 分かりましたから、何度も何度も同じ言葉をくり返さないでください!」
ライムは仕方なく、食べるものを探すため、森深くにひとりで踏み入った。