WEB限定 書き下ろし小説

セドリック&ライムの偉大(?)で華麗(??)な冒険!

6

 ライムは仕方なく、セドリックと男たちの間に入る。
「とにかく、落ち着いて話し合いませんか?」
「お前らには関係ない!」
 男のひとりがライムに向かって剣を突き出した。
「仕方ないですね」
 ライムはもっとも素早いことで知られるエメラルド・ドラゴンの一族である。人間の姿でも、その素早さは変わらない。
 目にも留まらぬ動きで 男の剣をかわして背中に回り込み、首の後ろに手刀を打ち込む。
「!」
 男は目を回して、その場に崩れ落ちる。
「こいつ!」
 もうひとりの男がライムに飛びかかろうとした。
 ライムは跳び上がって男の鼻にヒザを食らわせ、残りのひとりの胃のあたりに手のひらを当てる。
 二人も最初の男と同じように気を失って倒れた。
「悪は滅びる」
 澄ました顔でそう言ったセドリックが剣を鞘に戻し、女の子に手をさしのべた。
「美しいお嬢さん、怪我はありませんか?」
 ところが。
「お兄ちゃん!」
 少女は、倒れている男たちのところに駆け寄って抱きしめた。
「何てことするのよ、私のお兄ちゃんたちに!」
 少女はライムとセドリックをにらむ。
「お、お兄ちゃん?」
 男たちを指さすライム。
「そうよ! あたしのお兄ちゃんたちなんだってば!」
「お兄……ちゃんたち?」
 セドリックとライムは顔を見合わせた。

「実は俺たち、こいつの兄でして」
「こいつが家出したのを連れ戻そうとしただけで」
気がついた男たちは説明した。
話を聞くと、このあたりを治める貴族の息子と娘らしい」
「家出の原因は?」
セドリックがたずねる。
「パパがね、今度の友だちのお誕生会に行く時に着るドレス、買ってくれないって言うの」
少女は頬をふくらませた。
「だから、月食祭の時に買ったばかりだろう、ドレスは!」
兄のひとりが眉をひそめる。
「あれとは別のドレスだもん! 今度のは、真珠が縁取りについた白いドレスなの!」
「またわがままを!」
もうひとりの兄が額に手を当てた。
「……解決法が分かったぞ」
セドリックはニッと白い歯を見せると、女の子の肩に手をおいた。