WEB限定 書き下ろし小説

トリシア、セドリックのお姫様になる?

4

「ライム君って言ったっけ? 君もお茶飲む? そいつが目を覚ますまで?」
 おしゃべりフクロウはライムに尋ねた。
「い、いただきます」
 まわりの不潔さがさすがに気になるようだったが、礼儀正しくライムは答える。
「ちょっと待って!」
 トリシアは、おしゃべりフクロウがお茶を入れようとするのを止めた。
「せめてこのあたりに浄化の魔法をかけさせてよ。でないとほんとにお腹こわすから」

「う……ううん」
しばらくして、セドリックが目を覚まして起きあがった。
「僕はどうしてたんだい?」
セドリックはこめかみに指を当てながら、おしゃべりフクロウに尋ねる。
「もう終わったよ〜。あんたが悪党をやっつけて、事件は無事解決」
おしゃべりフクロウは適当に答えた。
「僕は気絶したままでも悪党を倒して君を救い出したんだね? なんて素晴らしい!」
セドリックはパッと顔を輝かせた。
「セドリック」
トリシアはクッキーをかじりながら言い聞かせる。
「こんなのインチキじゃない? 仲間にさらわせて、自分で助け出すなんて」
「彼らは仲間じゃないよ。お金を払って雇っただけだ」
セドリックはおしゃべりフクロウ一味を指さした。
「まったく。あなたとはまともに話ができないわね」
トリシアはため息をつく。
「僕もそう思いますよ」
ライムが頷く。
「そもそも僕はインチキが大好きなんだ! インチキをすれば、実力がなくても楽に勝てるじゃないか!」
セドリックは開き直った。
「知ってる。前に街区対抗の長距離走で、イカサマやって勝とうとしたものね」
と、トリシア。
「確かに! そんなこともあったかも知れないが、よく覚えていない!」
セドリックは胸を張った。
「最低ですね」
首を横に振るライム。
(とにかく、こんな騒動はもうごめんよ)
そう考えたトリシアは、声の調子を変えてセドリックに話しかける。