WEB限定 書き下ろし小説

はじまりの三人組!!

第一回

 レッスン2  落ちこぼれ貴族(きぞく)の花だん


 カンッ!
 かわいた音がして、もくせいの剣(けん)が宙をまい、しばふの地面につきささった。
「真剣でしたら、今のいちげきで、おぼっちゃまの首は飛んでおりますな」
 木剣を手に、せすじをすっとのばして立つ老人が、すわりこんで肩(かた)で息をしている少年に声をかけた。
「いつかは騎士団(きしだん)に入られる方が……身を入れてしゅうれんなされませ」
 ここは名門貴族、サクノス家の屋しき。
 老人は、この屋しきに長年使えているめし使いである。
「やっているつもりだ」
 と、くちびるをかんだ少年はショーン。
 ショーン・サクノス・ド・レイバーン。
 サクノス家の四兄弟の末っ子である。
 そして、今は剣じゅつの訓練の時間。
 ショーンは名門貴族の子供として、騎士になるため、毎日、こうしてめし使いを相手に練習を重ねているのだが……。
「お兄さま方は……」
「言うな!」
「失礼いたしました」
 めし使いは頭を下げた。
「……ごめん。分かっているんだ」
 ショーンはひざをかかえる。
「ぼくは絶望的ににぶいし、勇気もない。兄上たちのようには、なれはしない。いくら練習をしてもムダなんだ」
「ショーンぼっちゃま」
 めし使いは、温かいしせんをショーンに向ける。
「けんめいに取り組まれれば、お兄さま方がおぼっちゃまをおせめになることはございませんよ」
「知ってる! 兄上たちや父上は、ぼくにやさしい! やさしいから!」
 ショーンは、こぶしを地面にたたきつけた。
「……失望させてる自分がきらいなんじゃないか!」
「今日は……これくらいにいたしましょう」
 めし使いは木剣を拾い上げた。
「庭木の手入れ、お手伝いしていただけますか、おぼっちゃま?」
「……すぐやる」
 ショーンは目をこすって立ち上がった。