WEB限定 書き下ろし小説

はじまりの三人組!!

第一回

屋しきの人間ではない。
 ショーンと同じくらいか、少し、年下に見える銀色の髪(かみ)の少女だ。
 どろぼうだろうか?
 銀髪の少女は、開き切るすんぜんの花を選んでつみ取り、カゴにつめてゆく。
(大切な花を!)
 その光景にカッとなったショーンは、少女の前に飛び出して、思わずその手をつかんでいた。
「待て!」
「……あ」
 少女は身をすくませ、おびえた様子でショーンを見上げる。
「ひどいことをするな、君!」
 女の子はにげようとするが、ショーンは手をはなさない。
「花にだって命があるんだぞ! こんなにして!」
 女の子が手にしたカゴは、花だんからつまれた花でいっぱいになっている。
「……どうするんだ、その花?」
「売って……お金にする」
 少女は答えた。
 ほとんど聞き取れないくらいの小さな声だ。
「お金!? そんなもののためにぼくの花を!?」
 お金で苦労したことがないショーンには、信じられない話である。
「そんな……こと?」
 銀髪の少女は、くちびるをかみしめた。
「あんたには……分かりっこない……甘やかされた……貴族(きぞく)なんかに……」
「!」
 甘やかされた、という言葉は、ショーンの胸(むね)につきささった。
 自分は、家族やめし使いたちにとても大事にされている。
 そのことが分からないほど、ショーンはどんかんではないのだ。
「……行っていいぞ」
 ショーンは手をはなした。
「街の……警備兵(けいびへい)に……つき出さないの?」
 不思議そうにショーンを見つめる少女。
「つき出したって、つみ取られた花が帰ってくるわけじゃない」
 と、ショーン。
「だけど、二度とこんな事はするな。花がほしければ、今度からはぼくに声をかけろ」
「また……来ていい……の?」
「ぬすまれるよりマシだからな」
 ショーンはしずみかけた夕陽を背(せ)に、屋しきへともどってゆく。
「……あれ……ぜったいに……今の自分の……後ろすがたが……かっこいいと……思ってる……」
 花だんの前に残った少女は、ポツリと言った。

(続く)
ベルと、ショーンが、それぞれ出会った
この少女は一体…?
この出会いが、三人の運命を、とんでもない方向にみちびく…!

次回をお楽しみに!(4月末更新予定)