WEB限定 書き下ろし小説

はじまりの三人組!!

第一回

「ここはもう、このくらいにいたしましょうか?」
 ひぐれ近くになって。
 めし使いの老人は、庭木のえだ切りバサミを置いて、こしをのばした。
「そうだな」
 手を土だらけにしたショーンはうなずいた。
 庭の草花の手入れをしていると、ショーンは時々時間をわすれてしまう。
 乗馬や剣の訓練をするよりも、本当は花を見ている方が好きなのだ。
 だが、そんな自分の趣味(しゅみ)を、父や兄たちに知られるのははずかしい。
 このことを知っているのは、最初にショーンに花の育て方を教えてくれた、このめし使いだけだ。
「ぼくはもう少し花だんの手入れをする。お前は仕事にもどれ」
「はい、おぼっちゃま」
「さてと」
 めし使いが屋しきの中にもどると、ショーンは裏庭(うらにわ)にある小さな自分の花だんに足を向けた。
 花だんはもともと、四年前になくなった祖母(そぼ)が作ったものだが、今はショーンが花を植え、育てている。
 見ごろとなるのはもう少し先だが、すでにほとんどがつぼみをつけ、いく種かは花をほころばせつつあった。
 ていねいに手入れをすれば、きっときれいな花を見せてくれるだろう。
(少し花だんを広げ、花の種類をふやしたいところだな。春夏秋冬、いつでもきれいな花がさきほこるように……)
 ショーンがそんなことを考え、裏庭にやってきたその時。
「ん?」
 だれかが、ショーンの大事な花だんにかがみこんでいた。