WEB限定 書き下ろし小説

はじまりの三人組!!

第二回

「ばか……なの?」
「う。」
 そう真っ直ぐに聞かれて、ベルの顔はこわばる。
「ちょ、ちょっとばかり計算が苦手なだけよ! あと、作文とかもダメだけどね! 歴史とか、音楽とかも……。」
「ほぼ……ぜんめつ?」
「うっさいわね! そういうあんたはどうなのよ!? 学校の成績!?」
「学校なんか……行ってない。」
「行ってない?」
「学校に……行く……お金なんて……家には……ないの。」
「そんなのおかしいでしょ!? まずしい家の子どもには、王家が学費を出してくれることになってるじゃない!」
 王家からそういうおふれが出ていることはたしかだが、南街区には学校そのものがほとんどない。
 したがって、学校に通っている子どもも、多くはないのだ。
 しかし、ベルのようなゆうふくな家庭に育った子は、そんなげんじょうを知らない。
「つらくないの?」
「…………別に。」
 少女は足を止め、ぎゃくにたずねた。
「どうして……そんなこと……聞くの?」
「ど、どうしてかな?」
 ベルは考えこむ。
「……ちょっとばかし、つらいことがあったから、かな?」
「……どんな?」
「…………お母様のこと、ばかにされた。」
 自分でも信じられないくらいにそっちょくに話すベル。
「妖精だからって……アザラシに変身するからって……笑い者にされたの。」
「…………。」
「あはははは、やっぱ、今日のあたし変。」
 ベルは笑って頭をふった。
「昨日会ったばかりのあんたに、こんな話して……って!」
とつぜん、銀髪の少女はベルの背中に手を回して、ギュッとだきしめた。