WEB限定 書き下ろし小説

はじまりの三人組!!

第六回

「だが、わたしは悪いことをしたとは思っていない。まずしく生まれた子供たちを、みじめな一生から救いだしてやっていただけだ」
「子供を売ることが……救いだって?」
 アンリはまゆをひそめる。
「アムレディア王女が南街区の救済に取りくむようになってから、ずいぶんマシになったという話も聞くが、それでもまだ、光の当たらない人間は大ぜいいる」
 商人はあざ笑うようにひょうじょうをゆがませた。
「まずしく生まれた子供たちは、寒さとひもじさにたえかねてぬすみを働き、わたしのような悪党(あくとう)に育つか、ドブネズミのようにゴミをあさるしかない。わたしはそんなかんきょうからぬけ出す機会をあたえているんだ」
「……今までに子供たちを売った相手を教えてほしい」
 アンリは静かに言った。
「そうすれば、罪(つみ)が少しは軽くなるように、ぼくが王女殿下(でんか)に進言してもいい」
「今さらどうして……」
 と、肩をすくめようとして、商人はハッとなる。
「まさか!? 売った子供たちを取りもどす気なのか!?」
「この世界のどこにいようと、必ず」
 アンリはうなずいた。
「無理だ!」
「無理でも必ず。それが今、子供たちにできるぼくらのできるたったひとつのつぐないだよ」
「……いいだろう。すべて話そう」
 商人はしばらくアンリの顔を見つめていたが、やがて、肩を落としてつぶやくように言った。
「きさまのような人間に、おさなかったあのころに出会えていればな……」
「ちょっと! こんなやつ、一生地下ろうにとじこめておけばいいのよ!」
 ベルはドンッと地面をふみ鳴らしてこうぎする。
「そうかも知れないね」
 アンリはベルをふり返った。
「でも、ここでひとりをばっしてすべてを終わりにするよりも、今、このしゅんかんにも苦しんでいる子供たちを救いだすほうがずっといい、とぼくは思うんだ」