WEB限定 書き下ろし小説

はじまりの三人組!!

第六回

あらすじ
ベルとショーンは、アーエスを連れ去った男のあとをつけた。
すると、そこには男のなかまがいて、子どもたちが閉じこめられていた…。
二人はアーエスを救おうとするが、逆に見つかってしまい…。 



「かかれ!」
 号令をかける商人。
 と、その時。
「……意志と言葉がおりなす呪波(じゅは)よ、強大な力を持って悪を打ちくだけ……レガル!」
 アンリは右手をすっと上げ、短い言葉を唱えた。
 いっしゅん後。
 パーン!
 用心棒たちのにぎる剣の刃が、ブウンとしんどうしたかと思うと、細かなはへんとなってはじけ飛んだ。
 アンリが唱えたのは魔旋律(ませんりつ)。
 呪波とよばれる魔力をぞうふくし、魔法を発動させる呪文(じゅもん)の一種だ。
「……ま、まさか?」
「ほんとうに魔法使いの……アンリ?」
 顔を見合わせるベルとショーン。
「こ、こんなガキ、武器なんぞなくても!」
 用心棒たちは使い物にならなくなった剣をすて、アンリになぐりかかろうとする。
 しかし。
「むだだよ。深きねむりがなんじらを包みこむ……ドルム!」
 魔旋律ともに、うすべに色のきりがアンリのまわりに発生した。
 そのきりにふれたとたん、男たちは全員、その場にくずれ落ちる。
「もうのがれるすべはないよ」
 アンリは商人を見た。
「……きさまがあの、有名な宮廷魔法使いとはな」
 商人は頭をふる。
 アンリはかつて、世界をほろぼす力を持つと言われた怪物(かいぶつ)をたおした魔法使い。
 かなわぬことをさとり、これ以上、ていこうする気はないようだ。