WEB限定 書き下ろし小説

はじまりの三人組!!

第三回

「貴族(きぞく)のお屋しきとくらべると、つつましい家ですけれど、くつろいでくださいね?」
 軽やかな足取りで階だんを上りながら、母はショーンをふり返ってほほえむ。
「気にすることはないぞ。そんな庶民(しょみん)の生活を見るために、わざわざやって来たのだからな、あははははは!」
 胸(むね)をはって笑うショーン。
(しょ、庶民ですって! うちはアムリオン一の交えき商なのよ!)
 これにはベルもムッとなる。
(でもここはがまん! 父さんにはじをかかせないようにしなくちゃ!)
「それでは、お茶とおかしを用意しますから、少し待っていてね」
 母親が出ていくと、居間にはベルとショーンだけ。
 テーブルをはさんで向かいあうようにすわるが、初対面の二人に話すことなどありはしない。
「……」
「……」
(うう、考えてみれば、ぼくは女の子と話すのは初めてではないか!)
(そういえば、あたしって男の子と話したことってないのよね)
 ちんもくが支配する中、時間だけがすぎてゆく。
「あの……」
 仕方なく、まずベルが口を開いた。
「いいお天気ですね」
「外はくもり。今にも雨がふりそうだ」
「ひ、東街区は気に入っていただけまして?」
「最悪だ。そうぞうしい上に、道がせまく、建物も趣味(しゅみ)が悪い。金はあっても、洗練されてないおろか者が住む場所だな」
「父が世界各地から集めてきた美じゅつ品を、お見せしましょうか?」
「このぼくが感心するほどすばらしいものがあるとは思えん」
 会話をはずませるには、ショーンは正直すぎるようだ。
(こ、こいつは!)
 ベルはこめかみの血管が切れそうになる。
 だが、ちょうどそこに。
「はいはいはい、お待たせ?」
 ベルの母が、お茶とおかしを持ってきた。
 ラベンダーのお茶と、スミレの花びらのさとうづけが入ったクッキーだ。
「うむ。奥方は庶民にしては趣味がいい」
「あらあらあら、ありがとう」
 うれしそうな顔をするベルの母。
(ちょっと! 喜ばないでよ! ばかにされてんのよ!)
 ベルのいかりは倍ぞうする。
「……ところで」
 クッキーを上品に食べながら、今度はショーンのほうが会話のきっかけを作ろうとした。
「庶民の娘よ、勇かんで高貴(こうき)な騎士の生活について知りたくはないか?」
「別に」
「……武(ぶ)じゅつはどうかな? 剣じゅつに関心は?」
「ないです」
「…………西街区についてどう思う?」

「住んでる連中、性格(せいかく)悪そうですね」
 ベルの方も、興味のないことに興味があるとは言えないせいかくなのだ。
(ええい、これでは会話にならないではないか!)
 おたがい様である。
「……どうも」
 ショーンはため息をついた。
「上品でゆうがなこのぼくと、下品でガサツなきみとでは、話が合いそうにないな」
「そうですね。口先だけ勇かんな貴族なんて、仲よくなれそうにありません」
 ベルのほうもそっぽを向く。