WEB限定 書き下ろし小説

HP限定書き下ろし ショーン、騎士団入団!?

第一回

「あ~もう! くどいっ! 分かったから、とっとと目の前から消えて!」
 羊皮紙の束をカバンにしまいこむと、しっしと犬やねこでも追いはらうように手をふるベル。
「いいか! 一度来るって約束したんだから、ぜったいに来るんだからな!」
 ショーンはもう一度念おしすると、一足早く教室を出ていった。
「果てしなくめんどうくさいやつ」
 ため息をついたベルは、頭の後ろで手を組む。
「ま、約束したから行かないと。あ~あ、めんどうくさい」
「……けど」
 そんなベルを見上げ、アーエスがふとたずねる。
「……ショーン……学校に来るの……今日が……最後だって……言ってたよ。従者になったら……あんまり……会えなくなる……のかな……?」
「勝手にすりゃいいじゃないの? せいせいするわ」
「計算の宿題……だれが手伝うの?」
「う」
 計算が苦手なベルにとって、これは大問題だ。
「カバンが重い時、だれに持たせるの?」
「……」
 放課後、どっさりと買い物をした時など、たしかに不便である。
「学校のお昼ご飯、セロリが出たら、だれに食べさせるの?」
「それは……ちょっとこまるかも」
「ショーン、いてもじゃまだけど……いないと……不便な……雑用係(ざつようがかり)……」
 アーエスのひとみが、ものすごくあやしく光った。
「だから……ぼうがいしよう……試験の……」
「ぼうがい!?」
「……し~……声が……大きい」
 くちびるに人さし指を当てるアーエス。
「名づけて……『ショーンくん……騎士になれなくて……残念でした……イッヒッヒ……大作戦』。……やる?」
「そんなひどいこと! ……やるに決まってるじゃない」
 ベルとアーエスは、ガッチリとあくしゅを交わした。
 こうして。
 ショーンの入団試験は、おそろしい危機(きき)をむかえることになったのである。