WEB限定 書き下ろし小説

HP限定書き下ろし ショーン、騎士団入団!?

第一回

「あっれ~?」
 エティエンヌは、ショーンのすがたに気がつくと、ニコニコ顔でやってきた。
「やあやあやあやあ~っ! 親愛なるわが弟よ! 試験を前に、きんちょうしてるか~い!?」
 いきなりショーンにほおずりする兄のエティエンヌ。
「わわわっ! よさんか~っ!」
 ショーンは顔を真っ赤にし、必死にのがれようとする。
「ええっと、君たちは……ヘルちゃんとアラミスちゃんだっけ?」
 弟をだきしめたまま、エティエンヌはベルたちをふり返った。
「ちがうっ! あたしはベル!」
「アーエス。物覚えの……悪いやつ……」
 ふんがいする二人。
「あはははは! そうだった、たしか、そうだったよね~」
 エティエンヌは、全然悪いと思ってない様子で頭をかく。
「……で、どっちがショーンと付き合ってるんだっけ? ……まさか、二まただったり?」
「だ~っ! 付き合ってなんかいないわよ! たまたま! 運悪く! 同じ学校に通ってるだけ!」
「たとえ……この世界に……男の子が……ショーン……ひとりだけに……なっても……おことわり」
 とんでもない、といった表情でひていする二人。
「……そ、そこまで言わなくてもいいだろうに」
 ショーンはかなり不満そうだ。
「まあ、ともかく、ヘルちゃん、アラミスちゃん、弟の応援よろしく~。残念ながら、ぼくは試験監督の助手だから、応援してやれないんだよ」
「そっか……」
 ベルはまわりを見て気がついた。
 試験会場の周囲にもうけられた応援席には、受験者の両親らしき人たちがたくさん来ている。
 だが、ショーンの場合、父親も兄たちもみんな、騎士団員。
 公平さをたもつため、応援席にすがたを見せるわけにはいかないのだ。
(だから、あたしたちに来てほしかったんだ)
「兄上、いいのか、こっちをにらんでいるぞ?」
 ショーンは視線で副団長のほうをしめした。
「あははは……あの人ににらまれてるの、毎度のことなんだけどね」
 エティエンヌは顔をこわばらせると、試験監督席に向かって走りだす。
「はいは~い、今行きますよ~!」