WEB限定 書き下ろし小説

騎士の資格

第一回

村に着くと、この雪の中、多くの人々が外に出て、たいまつを手に走り回っていた。
「どうした!?」
 馬から飛び降りたプリアモンドが、広場に集まっている村人たちに声をかける。
「騎士様! そ、それが……」
 代表して答えた村の男が、途中で口ごもった。
「凍っていた川の氷が割れて、遊んでいたうちの子供が落ちたんです! スーが、スーがそれを助けようとして!」
 中年の女の人が進み出て、ハンカチを握りしめながら声を震わせる。
「子供を助け上げてくれたんですが、スーの姿は見えなくなって! 今、みんなで探しているんですけど、見つからないんです!」
「私たちも探すぞ!」
「了解!」
「はい!」
「行きましょう!」
 プリアモンドたちも川に向かった。

「スー! どこだ!?」
 プリアモンドと砦の騎士たちは、村のやや下流の川岸を探すことにした。
 灰色の川では、張っていた氷が割れ、大きなかたまりになってゆっくりと流れている。
「この寒さで川に落ちたのなら、もうとっくに……」
 栗毛の騎士が、あたりを見渡しながらつぶやく。
「きっと助かりますよ! しっかり探しましょう!」
 年少の騎士が背中を叩いて元気づける。
 と、その時。
「プリアモンド様!」
 隊長が、氷の間に浮かぶ女性の姿を見つけた。
 服の色からして、昼間会ったスーに間違いない。
 氷にしがみついておぼれずに済んだようだが、こちらに気がついている様子はない。
 どうやら意識がないようだ。
「助けに行く」
 鎧を身につけたままでは、重過ぎて泳ぐことはできない。
 プリアモンドは鎧を脱ぎ捨てた。
「ロープを!」
 年少の騎士がロープを持ってくると、プリアモンドはその端を自分の体に巻きつける。
「合図をしたら、引いてくれ」
「はい!」
 騎士たちがうなずくと、プリアモンドは川に飛び込んだ。