WEB限定 書き下ろし小説

騎士の資格

第一回

「医者を早く!」
 村まで戻ったプリアモンドは、集まってきた村人たちに呼びかけていた。
 だが。
「医者は隣の村です」
「それに、あのじいさんじゃ大した手当ては……」
 村人たちは顔を見合わせ、途方に暮れる。
「……乾いた毛布を! なるべく多く!」
 プリアモンドの決断は素早かった。
 集めた毛布でスーを幾重にもくるむと、そっとその体を抱き上げて馬を止めた場所に向かう。
「どうするんです!?」
 隊長がプリアモンドの後を追いながら尋ねた。
「王都に運ぶ」
 プリアモンドは歩調をゆるめずに答える。
「王都には頼りになる医者がいる。彼女に任せれば大丈夫だ」
「で、でも! 王都まで普通に進んで三日、急いでも丸二日はかかります!」
「半日で向こうに着くさ」
「無茶ですよ!」
 隊長は思わずプリアモンドの腕をつかんだ。
「着けっこないです!」
「やるだけのことはやったんです! もう何もできませんよ!」
 年少の騎士も、赤毛の騎士も信じられないといった顔で説得を試みる。
 しかし。
「前に言われたことがある。できる、できないじゃない。やるか、やらないかだと」
 プリアモンドはスーを抱いたまま、白馬に飛び乗った。
「騎士は決してあきらめない!」