WEB限定 書き下ろし小説

ショーンの騎士団本部案内!

実はこの怪物は、キャットが召還魔法で読み出した魔法生物。
 ベルを助けようとするショーンを怪物が叩きのめし、シャーミアンの前で恥をかかせる作戦なのだ。
「まったく、どうしてこんなことに私が関わらなければいけないのです?」
「……それは」
 と、アーエス。
「……ショーンが……やっつけられれば……見学は……お終い……早く……帰れる」
「それもそうですわね」
 キャットは納得してうなずく。
「だから……あの怪物に……ショーンを……やっつけさせて」
 アーエスはキャットに言った。
 だが。
「そんなことはできませんわ」
 キャットは首を横に振る。
「……………………………………………………………………………………はい?」
 アーエスは聞き返した。
「ですから、私が得意なのは召還魔法。呼び出すことはできますが、いったん呼び出したものを操るなんてことは無理ですわ」
「………………………………つまり…………………………………………できない」
「ええ」
「……………………それは……かなりまずいかも」
「考えてみれば、そうですわね」
 二人はサイクロプスにつかまれているベルを見る。
「ベル」
 アーエスはベルに声をかけ、手でバツを作って合図した。
「ちょ、ちょっと!? どういうこと、そのバツって!? ひいいいいいいいっ!」
 サイクロプスはベルを振り回しながら、暴れ回る。
 もとは古代の呪文を書いただけのただの紙切れに過ぎないサイクロプスだが、力はかなり強かった。
 シャーミアンを始めとする騎士たちはベルが握られているので、簡単には手が出せないのだ。
「……どーする?」
 と、アーエスはキャットにたずねる。
「そ、そうですわ! 私、これからダンスの練習がありますの!」
 キャットはピュウッと風よりも早く逃げ出した。
「とにかく囲め! 人質がいる、逃がすな!」
 シャーミアンはとりあえず、騎士たちに命じる。
「あの怪物……」
 騎士たちの後ろできびしい表情をしていたショーンがふと、アーエスの方に目をやった。
「…………まずい」
 アーエスは目をそらし、こっそりと逃げようとする。
「アーエス!?」
 何か隠していると確信したショーンは、逃げようとするアーエスの首根っこをつかんだ。
「……な……なんで……ございますか……ショーン君?」
  アーエスの口調はものすごく怪しい。
「素直に白状しろ」
「……………………します」
 アーエスはあっさりと口を割った。

「じゃあ、あれは王女が生み出したものなのか!?」
 話を聞いたショーンはあきれ返った。
「で、王女は!? 王女なら、あれを消せるのだろう!?」
「……逃げた」
「だーっ!」
 普段ならこういう事件の時に真っ先に駆けつけるアンリもアムレディアも、王都にはいない。
 トリシアを呼ぶのは……ショーンとしては、最初から問題外である。
「こんなの予定にないから! 誰かなんとかして!」
 ぐるんぐるん振り回されながら、金切り声を上げるベル。
「王女を……頼りにしたのが……そもそもの……間違い……」
 アーエスは自分が振り回されている立場でないことに、ちょっぴり安心しながら反省した。
「こらーっ! ショーン、あたしを助けろー! 助けてくんないと、あとで張り倒す!」
 怒鳴るベルをサイクロプスは振り上げて、地面に叩きつけようとする。