WEB限定 書き下ろし小説

ショーンの騎士団本部案内!

 と、その時。
「何事だ!」
「やれやれ」
「おっ待たせー!」
 プリアモンド、リュシアン、エティエンヌ。サクノス家の三兄弟がようやく姿を現した。
「ベルの身が危ない!」
 シャーミアンが説明する。
「……任せろ」
 ヒュンヒュンヒュン!
 リュシアンがサイクロプスに向け、立て続けに矢を放った。
 矢を避けようとして、足を止めるサイクロプス。
「今だ!」
 プリアモンドがサイクロプスの死角に回り込み、鉄鎚を肘に叩きつける。
「!」
 その痛みに、サイクロプスは思わずベルを手から落とした。
「はい、こっち!」
 と、ベルを受け止めたのはエティエンヌである。
「人質さえ取り返せば!」
 剣を構えたシャーミアンがサイクロプスに突進する。
「サラフ・リクード!」
 ショーンが魔旋律を唱え、シャーミアンの剣に炎をまとわせた。
「消えろ!」
 シャーミアンが剣を叩きつけると、サイクロプスは燃え上がる。
「……もともとは紙の束。炎が効いたな」
 息をつくショーン。
 やがて、サイクロプスは灰となり、風に舞って消えた。
「いい判断だ」
 シャーミアンは剣を収めながらショーンを振り返り、ほほ笑む。
 しかし。
「わー、すごいです!」
「さすが!」
「かっこいい!」
『星見の塔』の生徒たちが取り囲んだのは、サクノス家の三兄弟だった。
「き、貴様ら 僕も活躍しただろうが!」
 ショーンが抗議するが、誰も聞く耳を持たない。
 と、その時。
「い、生きてる?」
 目を回していたベルが意識を取り戻した。
「よかったな」
 ショーンはベルのところに行き、声をかける。
「心配してくれたの?」
「する訳なかろう」
「ちょっと、手を貸しなさいよ。お尻、すっごく強く打って、歩けないんだから」
「やれやれ」
 手を差し出すショーン。
 と、そこに。
「怪我したのねー」
 ズルズルと這うようにしてアンガラドがやってきた。
「……なんで普通に登場できない?」
 ショーンは反射的に後ずさりする。
「夏バテでー、立つのがダルいのよー」
 アンガラドはニヒヒーと笑う。
「それはともかくー」
 アンガラドは冷たい手をピタッとベルの頬に当てた。
「うふふ、手当てしてあげるー。ついでに血も調べましょー」
「血ーっ!?」
 ベルの顔が真っ青になった。
「逃がさないわよー」
 アンガラドはベルの腕をしっかりとつかむ。
「ちょ、ちょっと待って! あたしはほんのちょっとお尻をぶつけただけなのよ!」
「いいから、いいからー」
 ベルは訴えたが、アンガラドは聞く耳など持ってはいない。
「ひーっ! 誰かあたしを助けなさいって! こらー、あんたたちーっ!」
 ベルは助けを求めるが、『星見の塔』の生徒一同、聞こえない振りをした。
「頭に……血が……のぼってるから……バケツ五杯ぐらい……抜いてもらって……ちょうどいいかも……」
 ずるずる医務室に引きずられてゆくベルを見送りながら、アーエスは肩をすくめる。
「それは言えてるな」
 ショーンもうなずき、みんなに向かって言った。
「さて、帰るか」
「ベル先輩、大丈夫でしょうか?」
 ちょっと心配そうなのはエマだ。
「誰かが家に送り届けるだろう」
 と、ショーン。
「……そう言っておきながら……きっと……あとで……迎えにくる」
 アーエスが親指でショーンを指さし、ペロリと舌を出す。
「誰がだ?」
 ショーンは顔をしかめてから、シャーミアンを振り返った。
「面倒をかけてすまない」
「気にするな」
 シャーミアンはほほ笑み、ショーンの肩に手を置く。
「早く騎士になって、ここに来い」
「分かった。きっと戻ってくるとも。堂々と、騎士として」
 ショーンはうなずき、騎士団の本部を見上げるのだった。(おしまい)

…特別読みきりはいかがでしたか? 相変わらず仲がいいんだか、悪いんだかのショーンとベル、そしてアーエスでした!