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ショーン、人生最大の危機!?

2

そして、作戦の日の夜明け前。
「さあ、今のうちに着替えてもらうぞ。このままでは、商人の子供には見えないからな」
 ここは脅迫状を送られた商人の家。
 ショーンと一緒にやってきたシャーミアンは、折り畳まれた服を商人から受け取り、ショーンに手渡す。
「うむ。やはり僕は気品がありすぎるからな」
 ショーンは服を抱えると、着替えるために隣の部屋に移動した。

「シャーミアン殿! こ、この格好はあああああ!?」
 着替えを終え、部屋から飛び出したショーンは副団長に向かって声を荒らげていた。
 今、ショーンが身につけているのは、薄紫色をしたパフスリーブのドレス。巻き毛のウィッグにピンクのリボンと、ダイヤをちりばめたシルバーのネックレス。絹の白い長手袋と、パールピンクのピンヒールの靴だったのだ。
「なかなか見事な変装だ。これならば君の正体がバレることはない」
 ショーンの頭のリボンの角度を直しながら、満足そうにシャーミアンは頷く。
「……うん、いい出来だ。サイズが合えば私が着たいぐらいだ」
「確かにバレないが! バレないけども! 狙われていた子供が女の子だなんて、聞いてないぞ!」
 ショーンはドンと床を踏みしめて抗議する。
「ふうむ。……言い忘れたか?」
 シャーミアンは腕組みをして考え込む。
「言ってない、全く言ってない!」
 ガクガクと頷くショーン。
「そうか? だが、普通は着替え終わる前に気がつくと思うが?」
「ううう」
 そう指摘されたショーンはそれでも抗議を続ける。
「女の子に化けるのなら、トリシアやベルでもいいではないか!?」
「あの連中を使うと、何かと被害が大きくなる」
 もっともな判断である。
「ともかく、私が頼れるのは君だけなのだ。やってくれ」
 そこまで信頼を寄せられると、さすがに今さら断れない。
(……早く現れてくれ、犯人たち。知り合いに、この恥ずかしい姿を見られる前に)
 ショーンはそう祈るしかなかった。