WEB限定 書き下ろし小説

セドリック、はりきる!

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「トリシア、いるか!?」
 扉が乱暴に開き、背の高い女の人が入ってきました。
「シャーミアン?」
 振り返るトリシア。
 シャーミアンは、街を守る白天馬騎士団の副騎士団長です。
「もしかして、急患!?」
「東門近くの古い街壁がくずれた!」
 シャーミアンはきびしい顔で説明します。
「そばで遊んでいた子供たちや、近くの家の住民も下じきになっている!」
「レン、診察カバン!」
「分かった!」
 もめている場合ではありません。
 トリシアとレンは、シャーミアンといっしょに飛び出します。
「僕も行くよー」
 セドリックも、三人のあとを追いました。

         *         *         *

 街を囲む街壁は何百年も前に作られたもので、低いところでも三階建ての家を見下ろすぐらいの高さがあります。
 それがくずれたのですから、あたりはひどいことになっていて、多くの家々が石の下じきになっているようです。
「プリアモンドの隊は西側を! リュシアンたちは東、エティエンヌたちは東の被害を調べろ!」
 シャーミアンの命令で、ショーンのお兄さんたちを含めた騎士団員たちが、救助に取りかかっています。
 すでに何人もの人が助け出されているようですが、まだどのくらいの数の人がくずれた壁の下に残っているのか、見当もつきません。