WEB限定 書き下ろし小説

セドリック、はりきる!

4

 壁がくずれた場所では、下じきになった人たちを助け出す作業が続いていました。
 中心となって働いているのは騎士たちです。
「兄上!」
 ショーンは自分の兄たちを見つけて駆け寄りました。
「手を貸せ! こいつを動かす!」
 背中で大きな石を支え、踏ん張っているのは長男のプリアモンド。
「もう少しなんだが……なっ!」
「この大っきな石がじゃまになって、下にいる人たちを助け出せないんだよ!」
 石と地面のすき間に手を入れ、少しでも広げようとしているのは、二男のリュシアンと三男のエティエンヌです。
「僕らも!」
「五人なら!」
 レンとショーンも加わりましたが、大きな石はビクともしません。
「……助けて」
 下の方から、声が聞こえてきます。
「僕らじゃ無理だ!」
 歯を食いしばるショーン。
「あきらめるな!」
 レンは石にかけた指にさらに力を込めますが、石の下から聞こえてくる声はだんだん弱くなっていきます。
 と、その時。
「みなさん、どいてください!」
 レンの肩ごしに、ほっそりした手が伸びてきて、石をつかみました。
 振り返ると、そこにあったのは、いつになく真剣なミノンの顔です。
「はああああっ!」
 父親ゆずりの腕力を持つミノンは、片手で軽々と石を持ち上げると、街の外まで放り投げました。
「今だ!」
 リュシアンが下じきになっていた人を引っ張り出し、抱き上げます。
「助かったよ。君だね、ミノタウロスの娘さんというのは?」
 と、ミノンに手を差し出すプリアモンド。
「はい、未来の義兄(おにい)さま」
 ミノンはその手を握り返し、ショーンにウインクしました。
「その言い方はやめろ!」
 真っ赤になるショーン。
「ほらほら、けがしてる人はまだたくさんいるんだからね。さ、がんばろ!」
 エティエンヌはそんなショーンの頭に手を置き、みんなに声をかけました。