WEB限定 書き下ろし小説

セドリック、はりきる!

7

「あれだけの事故だというのに、けが人だけで済んだ」
 全員を助け出し、空き地にやってきたシャーミアン副騎士団長は、トリシアにホッとした顔を見せました。
「君のおかげだな」
「ううん。みんなの力だよ」
 トリシアは魔法を使いすぎたのか、気を抜くと倒れそうです。
「特に、僕のね!」
 すかさずセドリックがトリシアの肩を支え、胸を張ります。
「ベルから聞いたよ。トリシアを守ってくれたんだって? ありがとう」
 土ぼこりまみれのレンが、セドリックに声をかけました。
「レ、レン殿が? この僕をほめてくれた?」
 セドリックは、自分の耳が信じられないと言いたそうな顔です。
「ええっと……おかしいかな?」
 レンはちょっと照れたように頭をかきました。
「と、と、と、とんでもない!」
 セドリックは顔を赤くして後ずさります。
「……でも、僕はママ以外の人からほめられたことがなくって」
 その瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちます。
「初めてなんだ……こんなの」
 セドリックはみんなに背を向けると、声を上げて泣き出しました。
「ほら、その傷」
 トリシアはセドリックの顔に触れてこっちを向かせると、そのはれた右目に優しく治癒魔法をかけるのでした。

(終わり)

……いかがでしたか?
レンとセドリック、意外といいコンビかも!?
セドリックは6巻でも大かつやくしているので、そちらもぜひ読んでね!