WEB限定 書き下ろし小説

レン、騎士をめざす!

2

「熱心だな」
 三兄弟の父、つまり白天馬騎士団の騎士団長がやってきて、レンに声をかけた。
「レン殿、来ていたのか?」
 今日は珍しく、末っ子のショーンも一緒だ。
「お邪魔しています」
 レンは騎士団長に一礼した。
「どうだ、この連中が師範役では、心許ないのではないか?」
 騎士団長は微笑みかける。
「いえ、勉強になります」
 レンは答えた。
「力任せのプリアモンドでは、大したことも教えられんだろう?」
「ぐっ! 父上まで!?」
 プリアモンドは真っ赤になる。
「で、何の用だ? 何のたくらみもなく、レンに声をかけるあんたじゃないだろう?」
 リュシアンが探るような目を騎士団長に向ける。
「……ふむ、それだ」
 騎士団長はヒゲをしごいた。
「レン、この騎士団に入ってみる気はないか?」
「…………はい?」
 レンは戸惑いの表情を浮かべた。
「我が白天馬騎士団の入団試験を受けてみないかといっている」
「え~っ!?」
「なるほど!」
 エティエンヌにお仕置きしたシャーミアンが戻ってきて、騎士団長の提案に頷いた。
「確かにレン君なら、我が騎士団に向いています」
「いや、でも、よく考えないと」
 レンはどう答えていいか分からない。
「次の入団試験は2か月先だ。それまでじっくり考えればいい」
 シャーミアンがレンに言う。
 だが――。
「いや、試験は3日後だ。貴重な人材を他の騎士団に持っていかれてはかなわないからな。特別入団試験を行う」
 騎士団長は宣言した。
「待て待て待て! いつ決めたんだ!」
 リュシアンが珍しく声を荒らげる。
「今、決めた」
 と、騎士団長。
「あのな!?」
「リュシアン、無駄だって。この人の自分勝手、今に始まったことじゃないでしょ?」
 エティエンヌがこめかみを押さえて頭を振る。
「もちろん」
 騎士団長はショーンを振り返って付け加えた。
「受験希望者は広く、王都全域で募る。ショーン、お前も受けて構わんぞ」
「本当ですか!?」
 グッとこぶしを握りしめたショーンは、キラキラ輝く瞳をレンに向ける。
「レン殿! 一緒に試験に合格して、騎士になろう!」
「あはははは……」
 受けないとは、言い出せない雰囲気だった。