WEB限定 書き下ろし小説

レン、騎士をめざす!

6

「どうでした!?」
 筆記試験を終えて外に出てくると、ベルとアーエスが駆け寄ってきた�。
「一応、問題には全部答えられたかな? 合っているかどうかは別だけど」
 ショーンを盾にしてベルの抱きつきから逃れ、レンはうなずいた。
「僕はだな――」
 と、ショーンも自信満々の顔で言いかけたが――。
「あんたには聞いてない」
 ベルはショーンを押し退けた。
 
 一同はいったん「三本足のアライグマ」亭まで戻って食事を取り、午後になって会場に戻った。
 本館の前には筆記試験合格者の名前が張り出されていて、もちろん、そこにはレンとショーンの名前もあった。
 合格者は中庭に集合し、たくさんの見学者に囲まれて試験監督が登場するのを待った。
 しばらくして。
「今回は優秀な受験者が揃ったようだな。半数が実技試験にまで達したのは数年ぶりだ」
 試験監督を務めるプリアモンドが現れ、筆記試験合格者を見渡して�言った。
「だが、この2次試験で候補者は3名にまで絞られる。今度の試験は集団戦で、武器はこちらで渡す木製の剣のみ。倒れた者、ひざをついた者から失格となり、最終的に3人になった時点で2次試験は終わりだ」
「2次試験って……?」
「もしかして、3次まであるのか、今回の試験?」
「聞いてないぞ」
 受験者がざわついた。
「おい、組もうぜ」
「ああ」
 何人かはすでに集団を作り、作戦を立て始める。
 レンとショーンも武器を受け取ると、視線を交わす。
「お互い、背中を守ろう」
「了解した」
 筆記試験合格者21名が中庭に散ると、プリアモンドが高く掲げた手を振りおろした。
「では、始め!」
 号令と同時に、10人ほどが一斉にレンに襲いかかった。
「生意気なんだよ、貴族でもないくせに!」
「お前だけは騎士にならせないからな!」
「!」
 一度に四方から攻撃されて、レンは防ぐだけで手いっぱいだ。
 中のひとりが地面を蹴って、レンの目に砂をかけようとする。
「それ騎士の戦い方か! 卑怯者が!」
 ショーンがレンの背中に回り込んだ。
「勝てばいいんだよ!」
 そう怒鳴った青年貴族は、ショーンに足払いをかけたが、ショーンは倒れないで踏み止まる。
「ふっ! こっちはしょっちゅうベルやアーエスのおかげでひどい目にあっているから、これしきのことでは倒れないのだ!」
「こら~っ! 人聞きの悪いこと言うんじゃないわよ! あとで張り倒すからね!」
 見学席のベルが立ち上がってショーンをにらんだ。
「実に……心外……」
 見学者に手製のパンフレットを売り回っていたアーエスもつぶやく。
「な、何だよ、こいつら!」
「意外と強い!」
 青年貴族たちは次々と仲間が倒れ、失格になっていくのを見て青ざめた。
「当然だ」
 会場の隅でこの様子を見ていたリュシアンが不敵に笑う。
「俺たちが稽古をつけたレンが、実際の戦いを知らぬ連中に負ける訳がない」
「だよね~」
 その隣でエティエンヌも頷いた。
 しかし――。