WEB限定 書き下ろし小説

レン、騎士をめざす!

3

  その夜。
 レンは「星見の塔」に戻り、アンリに相談していた。
「そうか」
 話を聞いたアンリは微笑み、窓から星空の方に目を向ける。
「レンが『星見の塔』を旅立つ日が来るとはね」
「いや、だから旅立ちませんって」
 レンは首を横に振った。
「騎士団長が勝手に受けさせる気になってるだけで」
「それは落ちた時の言い訳かい?」
 と、アンリ。
「違いますよ! それにもし――」
 レンはちょっとためらってから続けた。
「もしもの話ですけど、もしも受かって騎士になったとしても、僕は魔法使いの道をあきらめませんから」
「となると、君は魔法騎士だね」
 アンリは頷く。
「魔法騎士?」
「そうなるだろう? 騎士であると同時に、魔法使いということになると」
「それを言うなら、アンリ先生だって魔法騎士ですよ。武術大会にも優勝したことがあるんでしょう? それも、連続優勝記録を持つプリアモンドに勝って?」
「一度だけさ」
 アンリはちょっと恥ずかしそうに頭を掻く。
「一度しか出なかったからじゃないですか? プリアモンド、もう一回戦わせてくれっていつも言ってますよね?」
「彼もああ見えて意外としつこいんだよなあ」
 アンリは苦笑し、レンの肩に手を置いた。
「でも、入団試験を受けるのはいい機会かも知れないよ、レン。君が将来、何になりたいのかよく考えるためにも」
 
「何になりたいのか、何をしたいのか、かあ……」
「いつもトリシアに振り回されてばかりで、そんなの、考えたこともなかったなあ」
 レンは夜空を見上げてつぶやく。
「僕はいったい、何になりたいんだ?」
 星々は瞬くだけでレンの問いかけに答えてはくれなかった。