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大混乱、ダッシュの新生活

3

「まあ、店の手伝いをするかどうかは別として、これからちょっと騎士団本部に来てもらうぞ」
シャーミアンがダッシュに声をかける。

「何しろ、ドラゴンが街で暮らすことになるんだからな。王都の治安を守る騎士団長に報告せねばならん」
「待てよ、こいつはとっくにこの街で暮らしてんだろ? なんで俺だけ許可がいるんだ?」
ダッシュはさっきからずっと大人しくしているエメラルド・ドラゴンのライムを指さした。
「ライム君の場合は、この名門貴族であるこの僕、セドリックが身元保証人になっているのだよ!」
セドリックが胸を張って前に出た。
「だから、街のみんなも安心という訳さ!」
「それに〜、ライム君は可愛いですから〜」
フィリイがライムを捕まえて、頭を撫でる。
「あわわわ!」
ライムは真っ赤になった。
「そうそう、この子、性格もいいし」
と、同意するアーリン。
「むしろ、身元保証人が必要なのは、セドリックの方かと?」
フロイラインが、セドリックに冷たい視線を向けた。
「そんなに僕のことを心配してくれるのかい? 困ったなあ、僕にはトリシア嬢という、心に決めた人がいるというのに」
セドリックはフロイラインの手を取り、白い歯を見せる。
「…………相変わらず、学習能力に欠けますこと」
フロイラインは、フ〜ッとセドリックに息を吹きかけた。
セドリックは笑顔のまま、カチンコチンに凍りついた。
「だ、大丈夫なんですか?」
ライムが心配そうにセドリックを見つめる。
「二、三日したら融けますわよ」
フロイラインはフンと鼻を鳴らした。
「……ああっと。じゃあ、僕たちは騎士団に行くから、ダッシュがこれからクラスのに必要なもの買い揃えておいてくれるかな?」
レンはトリシアに頼む。
「……いいけど、あとでちゃんと払ってよ」
トリシアはレンを見返した。
「そ、それはダッシュに言うことじゃないのかな?」
レンの顔はこわばる。
「当てにならない」
トリシアは断言した。
「んだとお!」
「その話はあとだ。騎士団本部に行くぞ」
シャーミアンはトリシアに突っかかろうとするダッシュの首根っこをつかんで『三本足のアライグマ』亭の外に引っ張り出した。