WEB限定 書き下ろし小説

はたらく喜び?

5

「セルマ、ふたり分、席空いてる?」
 夜の見回りの途中なのだろう。
 レンとダッシュが店に入ってきた。

「おっ! レンとトカゲ!」
 カナルがふたりのところに駆け寄った。

「トカゲじゃねえって言ってんだろ、犬っころ!」
「むっ! カナル、犬違う!」
「でも、なんでカナルが?」
「カナルはテンニンになったのだ」
 カナルは誇らしげに胸を張る。

「店員だろ、相変わらず、あったま悪いな、お前」
「トカゲよりマシ」
「だからトカゲじゃねえ!」
「こらこら、お客さんともめるんじゃないよ」
 セルマがダッシュとカナルの間に入り、レンにたずねた。

「あんたたち、カウンター席でいいかい?」
「うん」
 レンはうなずく。

「カナル、案内するぞ!」
 カナルはレンとダッシュの前をトコトコと歩いてカウンターまで進んだ。

「ごくろうさま」
 カウンター席に座ったレンは、カナルの頭をなでてやると、右の席のトリシアに声をかけた。

「カナル、ここで働くことになったんだ?」
「メデューサとミノンもね」
 トリシアはうなずく。

「また変なのが働いてんな、ここ」
 ダッシュもトリシアの右に座り、肩をすくめた。