WEB限定 書き下ろし小説

はじまりの三人組!!

第五回

「静かにしたほうがいい。連中に気づかれるよ」
「!」
「!?」
 おどろいてふり返るショーンとベル。
 そこに立っていたのは、白いローブをまとった、背の高い金髪(きんぱつ)の青年だった。
「こいつ! 見張り!?」
 ショーンをかばうようにして、ゆだんなく板をかまえるベル。
「静かにしなさい! でないと、こいつで引っぱたくからね!」
 しかし。
「君が使うには、その板は重すぎないかい?」
 青年はベルを見て、目を細めた。
 次のしゅん間。
「……え?」
 ベルの手から、ふっと木の板が消えた。
 そして板の代わりに、その手ににぎられていたのは、赤いバラの花束だった。
「うん。そっちのほうが似合っている」
 青年は満足そうにうなずく。
「な、な、な、な、な!」
 顔を真っ赤にするベル。
「ぼくは君たちの敵(てき)じゃないよ」
 青年はほほえんだ。
「ど、どうなってんの?」
 ベルは花束と青年を見くらべる。
「……な、な、何者だ!?」
 ベルの背中にしがみつき、ショーンはうら返った声で問いただした。
「ベルに何かしたら、サクノス家の一員たるこのぼくがゆるさないぞ!」
 言っていることと、取っている行動が、まったくぎゃくである。
「ぼくはアンリ」
 青年は名乗る。
「アンリ? ……宮廷魔法(きゅうていまほう)使いと同じ名ではないか?」
 あぜんとするショーン。
「ほんっと、へっぽこね、あんたは! あの伝説の魔法使いが、こんなわかいはずがないでしょ! ただ名前がいっしょってだけ!」
 アンリの名前は、ベルも知っている。
 前に父が助けられたことがある、と話していたのを聞いた覚えがあるのだ。
「そ、それもそうだな」
 ショーンはちょっとホッとした顔になる。
「天才魔法使いが、こんな倉庫街をうろついているわけがない」