WEB限定 書き下ろし小説

はじまりの三人組!!

第五回

「いたわ」
 ベルが見たのは、手首に鉄の輪をはめられた、十人ほどの少年少女だ。
 ランプの明かりに照らされた子供たちの中には、アーエスのすがたもある。
 そして、アーエスたちの前には、先ほどの商人が立っていた。
「お前たちは商品だ。きずつけたくはないが、さからうならば楽しい思いはできないぞ」
 商人は子供たちを見わたす。
「これからしばらく、お前たちは木箱に入ってもらう。川を下ってこの国を出るまでだ。南のヴィントール王国では、アムリオンの子供は高く取り引きされるからな」
 これを聞いて、小さい子供たちは泣きだした。
「……こわがらせて……楽しい?」
 アーエスはいかりの目で商人を見上げる。
「わたしをこわいと思えば、にげようとはしないだろう?」
 商人は笑った。
「わたしは……こわくなんかない」
 頭をふるアーエス。
「お前は反こう的だ。もっとこわがってもらおうか?」
 商人はムチを取りだし、アーエスのほうにふみ出す。
 と、その時。
「やめなさい!」
 がまんもげんかいだった。
 ベルは思わず、商人とアーエスとの間に飛びだしていた。
「あいつには計画性というものがない!」
「仕方がないさ!」
 ショーンとアンリもベルに続く。
「おやおや、ベルおじょうさんではありませんか?」
 しんにゅう者を見た商人は目を細める。
「よけいな好奇心は身をほろぼしますよ」
「アーエス! 無事なの!?」
 ベルは銀髪(ぎんぱつ)の少女をだきしめた。
「ベル?」
 アーエスは首をかしげる。
「……と、お花屋さんの男の子」
「だれがお花屋さんだ! お前がうちから勝手に花を持っていくだけだろうが!」