WEB限定 書き下ろし小説

守りたいもの ~レンの気持ち~

2

「要するに」
 夕方になって。
 レンはショーンとセドリックを『三本足のアライグマ』亭に集めていた。
「プリアモンドたちが強いのは、三人が力を合わせているからだ」
 レンはそう言って、二人を交互に見る。
「そうなのか? あの連中、一人でも十分に強い気が?」
 首をかしげるショーン。
「いや、レン君の言うとおりだよ!」
 調子の良さでは誰にも負けない貴族のセドリックは瞳を輝かせる。
「この美しくてお金持ちの僕が、そう、この僕があの兄弟に人気で負けるのは、相手が三人だからさ!」
「それはともかく、僕たちも三人で協力すれば、プリアモンドたちと同じくらいにはみんなに注目されると思う」
 レンは続けた。最初は強さで三兄弟に対抗する、という話だったはずだが、すでにもう目的が変わりつつあることにレンは気づいていない。
「……それにはかなり人選に問題がある気がするのだが?」
 ショーンが視線を向けた先にいるのは、もちろんセドリックだ。
「そんなにへりくだることはないよ~、名前はよく知らないサクノス家の四男の人。君だって、それほど僕らの足手まといにはならないはずさ」
 セドリックはショーンの肩を叩いた。相変わらず、ショーンの名前を覚える気がないようである。
「……やはりこいつは嫌いだ」
 と、セドリックをにらむショーン。
「しょうがないだろ? どうしても仲間に入れてくれってうるさいんだから」
 レンはこっそりとショーンにささやく。
 そんなレンたちを見て、隣のテーブルについているベルがため息をつく。
「は~、男の子って、どうしてこう子供っぽいんだろ?」
「……同感」
 うなずいたのは、向かい合って座るアーエスである。
「でも、そんなレン先輩も可愛くってすてき!」
「……そこは……同感……できかねる……」
「あたしの気を引こうとして、ショーンたちと手を組むなんて!」
「……そこも……同感……できかねる……」
「とにかく! 『セドリックと愉快な仲間たち』の結成を祝おうじゃないか」
 セドリックは乾杯でもするかのように、砂糖が山ほど入ったホット・ミルクのカップを高くかかげる。
「待て! なんだその名前は!? ここは『偉大なるショーン・サクノス・ド・レイバーン様と忠実な子分たち』だろう?」
 ショーンが立ち上がった。
「君は相変わらず趣味が悪いねえ、四男の人?」
 セドリックは上から目線で鼻を鳴らす。
「お前に言われたくない!」
 身を乗り出してテーブルを叩くショーン。
「とにかく、『笑顔がすてきなセドリックとその他』という名前は譲れないよ」
「さっきと全っ然、違うだろ!?」
 二人はレンをそっちのけにして言い争った。
「……好きにして」
 レンは頭を抱える。
 結局。
 呼び方が『魔法騎士隊』に決まった頃には、真夜中になっていた。